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「慎太郎、慎太郎ってば！」
「あぁごめん、なに？」
ここ最近、北斗がみんなと仲良くて嬉しい
北斗がいつも笑っていて嬉しい
嬉しいんだけどその反面、それを素直に喜べない自分がいる
「どうした？具合悪い？」
覗き込んできた黒い瞳に吸い込まれそう
細い目は意味ありげな光を宿していて、
見つめたら目が離せなくなる
「ほんとに具合悪いの？」
ぴと、とおでこに手を当てられれば
途端に上がる体温、と感じる北斗の手の冷たさ
「熱はないと思うけど…」
「北斗の手、冷たいね」
冷え性だからね、なんて言う北斗の右手を掴む
ゴツゴツしててでも指の細い綺麗な手
「冷たい、気持ちい」
そう言って握れば、目の端で赤くなった耳が見える
「どうしたの慎太郎、やっぱ変だよ」
耳を染めながら手を解こうとするけれど、
絶対に離したくなかった
「俺の手は冷たい？」
「…あったかい。慎太郎の手はいつでもあったかいよ」
そう言って手を握り返す北斗が可愛い、
なんで握られてるのか理解していないだろうに、
不用意に握り返してくるなんて
「ほくとぉ、」
「ん？」
「北斗にとって、俺はなに？」
「…難しい質問だね」
北斗にとって俺はなんなんだろう
昔の相棒？
頼もしい先輩？
やんちゃな年下？
どれも正解なようで、どれも間違っているようで
考えても分からないなら聞いてしまえばいい
「俺にとっての慎太郎は…
いつも見ててくれる人、かな」
「どういうこと？」
「俺が笑ってたら泣いてたり怒ってたり楽しんでたり、そんな時いつも見てるのが慎太郎かな。
ある意味一番の理解者だよね、」
“ある意味”って言ったのは、慎太郎は俺のこと見てるだけで何かをする訳じゃないからね
と付け足した
そうか、俺は北斗に気付かれるくらい見ていたのか
そんな驚きが頭を駆け巡る
「…俺ね、慎太郎の目が好きなの。その目が好きだから、慎太郎に見られてるのも好きだよ」
そう言ってまた覗き込む
黒く透き通った瞳は先程よりも細められた
「じゃあ、俺にとっての北斗もいつも見ててくれる人になってね」
「それは約束できないかなぁ…」
少し困ったように笑う北斗がやっぱり好きだと思った
fin
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作者名：ぷりむら
| 作成日時：2021年3月10日 15時
