許されたい (ページ10)

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学校での時間のほとんどを読書と北斗に使うようになった俺に、前まで一緒に過ごしていたクラスメイトたちが陰口を言うようになった頃。珍しく北斗が俺の教室に顔を出した。

「ジェシー、昨日言い忘れたんだけど
　今日の放課後は図書室開いてないから」

「あ、え、そうなの？」

教室のドア近くで北斗と会話していると教室内から向けられる視線。女子は見慣れない先輩の訪問に黄色い声をあげていて、男子はひそひそとこちらを見ながら話している。北斗にバレないように笑顔を向けながら周囲に意識を向けると一番近くの席にいた数人の会話が北斗の耳に入ったようで。

「親がいないから何？
　君たちに何の関係もないことだよね？」

北斗の冷たく鋭い声が教室に響く。そんなに大きな声じゃなかったが俺に対する嫌なざわめきが一瞬でなくなった。俺のためにそう言ってくれたのは嬉しかったけどそのせいで北斗まで何か言われたら、なんて焦った俺は北斗の腕を掴んで教室を出た。

「なあ、ジェシーって」

「あ、ごめん」

北斗の声で我に返ると屋上に続く階段の踊り場にいて、掴んでいた腕を離し謝ると北斗は何も言わずにただ笑ってくれた。クラスメイトのことは一切聞いてこなかったし、もう授業始まっちゃったからと言って二人で屋上に行きいつも通り何気ない話をした。授業をサボったのは初めてだと伝えると北斗は俺は何回かあると教えてくれて、また北斗の知らない部分に触れられた気がして嬉しかった。

「北斗、さっきはありがとう」

「ああ、俺が嫌だっただけだから」

気にすんなよと言い照れ臭そうに鼻を触り笑った後、俺の頭をぐしゃぐしゃと撫でてくれた。ボサボサになった俺の髪型を見て大笑いする北斗が俺には子供の頃にテレビで見た戦隊モノのヒーローに見えた。

一足先に卒業した北斗は大学生になるとバイトを始めたので会う機会は少なくなったが、そこそこの頻度で連絡を取り合っていたし、たまに電話で勉強を教えてもらっていた。そのおかげもあって俺も北斗と同じ大学に進むことができ、また北斗と過ごす時間が増える。そう思っていたのに。

北斗は今どこに居るんだろう。何か危険なことに巻き込まれているんじゃないか。心配で仕方がないけど今の俺には何も出来ない。大我は俺たちに任せてと言ってくれたけどそれじゃ駄目なんだ。あの日俺を助けてくれた北斗を今度は俺が助けたい。