許されたい (ページ7)

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商品として捕まっていたジェシーは組織の人間に捜索されていて、一人で出歩くのは危ないので俺たちの店で一緒に暮らすようになった。

ジェシーはアメリカ人の父親と日本人の母親をもつ所謂ハーフで、幼い頃に父親を亡くし祖父母の家で育てられたらしい。母親は高校生の頃に病気で亡くなり大学に入学すると同時に祖父母の家を出て大学の寮に入ったと笑いながら話してくれた。見た目とは裏腹に英語はそこまで得意ではないようで、必死に勉強してると言いながらホットドックが好きそうな笑い声をあげる陽気な男だった。

「大我、今度一緒にカラオケ行こうよ」

「いいよ、樹の奢りね」

「何でだよ！」

「DAHAHA！」

喋ることが好きなのか俺やきょもを見つけてはひたすら話しかけてくる。寝起きの俺につまらない一発ギャグをしてくるのだけは今すぐ辞めて欲しいけど、きょもは案外気に入っているようで、二人きりだった生活もジェシーのおかげで賑やかになり最近は俺もきょもも笑うことが増えた。

「・・・は？」

ジェシーが探している松村北斗という男について調べ始めて2週間が経った。付き合いのある繁華街の店や人間にきょもとジェシーが聴き込みに行くも情報は得られず、古い付き合いの情報屋に頼み込みデータを送ってもらったが、予想外の内容に俺は一人頭を抱えてしまった。表で生きるジェシーの友人だからと勝手に勘違いしていたみたいだ。

「ジェシー、松村北斗って家族いないの？」

「・・・北斗についてなんか情報入ったの？」

ソファできょもと戯れているジェシーに声をかけると視線を彷徨わせ質問で返してきた。松村北斗の過去や抱えているものにジェシーは気が付いているのか、詳しいことを知らないのなら一応個人情報だし黙っていた方がいいのか。ジェシーに視線を向けたまま一人そんなことを考えていると不意にジェシーが立ち上がり、俺のいるバーカウンターの方へ近づいてきた。

「北斗はね、俺のヒーローなんだ」

カウンターの端の方の席に座ると目を閉じて何かを懐かしむように俯いたジェシーは軽く息を吐き、再び顔を上げ俺の方をじっと見つめて酷く優しい声でそう呟いた。

その憂いを帯びた瞳に吸い込まれるような感覚に息を呑むと、ジェシーの視線は先ほどまでいたソファに向き未だに寝転がったままのきょもを捉えると、数回瞬きをしたきょもが起き上がりソファに座り直すのを確認しジェシーは再び俺の方を見つめ、松村北斗という男について話し始めた。