許されたい (ページ6)

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あの日連れ帰ってきた赤髪の男。一晩経っても目を覚まさなかったので心配したきょもが馴染みの闇医者を呼ぶと、男を見るなり大きな溜息を吐いて頭を掻いた。闇医者の話によるとここ最近繁華街を彷徨いている大学生らしく、その目立つ容姿からどこかの組織の下っ端連中に絡まれ怪我をしているところに何度も遭遇しているとのこと。

傷の手当てをする度にこの繁華街がいかに危険な場所か話しているのに男は全く聞く耳を持たず、毎晩この繁華街に来ては色んな店や廃ビルに足を運び喧嘩やトラブルに巻き込まれているらしい。

「先生が人助けなんて珍しいね」

「俺だって場違いな若造が路地裏で
　一方的に殴られてたら流石に助けるよ」

手早く処置を済ませ内服薬をカウンターに置き煙草を吸う俺の頭を軽く撫で、支払いよろしくとだけ呟き店から出ていった闇医者、先生は俺ときょもにとって第2の父親のような存在。久しぶりに撫でられた頭に残る温もりに自然と笑みが溢れた。

「先生が何も言わなかったってことは
　薬飲めばよくなるってことだよね？」

「そうだろうな」

それにしてもこの男はなぜ危ないと知ってからもこの繁華街に通っているのだろう。何も知らずに迷い込んだにしてはおかしいし、先生の話では毎晩色んな店や廃ビルに訪れていたという。組織に所属したい一匹狼か？それとも・・・

次の日の昼過ぎ、空き部屋に寝かせていた男がきょもを抱っこして店の方に顔を出した。爆発している寝癖をそのままに寝惚けた様子でこちらを見る男の顔は極々普通の大学生の顔で、裏と呼ばれるこの路地裏には似合わないなんて思ってしまった。

「助けてくれて本当にありがとう」

俺に起こされたきょもの隣に座った男はジェシーと名乗った。きょものストレートな質問に時々独特な笑い声をあげて楽しそうに話すジェシーは1学年上の先輩、松村北斗を探してこの繁華街を訪れていたらしい。

数ヶ月前に休学すると言ってから音信不通になった松村を心配していたところ、たまたまサークルの集まりで松村がこの繁華街に出入りしているという噂を耳にしたという。この繁華街が危険だということは分かっていたからこそ、松村のことが心配で何もせずには居られなかったようだ。

「松村北斗ね、調べてあげようか？」

「え、まじで！いいの？」

「いいよいいよ、ね、樹」

「・・・いいけどさ」

ハイタッチをして喜ぶ二人を横目に仕方ないなと思いつつ俺はPCに視線を落とした。