許されたい (ページ3)

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借金取りの男たちは困惑していた。闇金業が上手くいき最近は組織内の評価も良く、残りの簡単な案件をこなせば組織の幹部から他の案件も任せてもらえるはずだった。

どうしてこうなった？23時を回った頃、急に事務所内の電気が切れ停電か？とブレーカーを確認しに何人かが廊下に出た瞬間だった。暗闇に淡く光る桜色の何かを見た。

「おい、何かいるぞ！」

そう叫んだ時にはもう遅く周りの仲間たちはみんな倒れていて自分の左胸を黒い何かが貫いていた。何かの能力か？いや能力なんて誰かの噂話でしかないだろう。人間じゃない、これは化け物だ。

「ねえ、今化け物って思ったでしょ」

薄暗い室内を見渡すと窓際に細身の男が立っている。逆光でシルエットしか見えないが、淡く光る桜色はその男の瞳で思わず息を呑む。

「お前、闇に溶ける、桜色・・・」

つい最近本部に行った時に下っ端の誰かが噂していた。闇に溶ける桜色とはきっとこの男のことだろう。能力持ちは存在しないと言われてきたが、この胸に突き刺さるそれが答えである。この男は何かの能力を持った特異な人間だ。

「そう、俺は能力者だよ」

そう呟いた男が両手を広げると部屋の床に黒い水溜りのようなものが広がる。床全体に広がったそれは倒れている男たち全てを飲み込み消し去ってしまった。

「おい、こっちだ！」

廊下を走る男たちは見えない何かに追われ続けている。ブレーカーは落ちていないのに電気はつかない。何かがおかしい。そう考えながら組織の機密情報が入ったUSBと商品が保管されている部屋の鍵をなんとか持ち出して逃げようと裏口に向かう。

「逃げても無駄だよ」

不意に耳元で聞こえた何者かの声に立ち止まり銃を構えるも誰もいない。気味が悪い。当たるわけがないのだが焦った男は引き金を引く。すると目の前に細身の男が現れ左肩を押さえていた。仕留めたと思ったのも一瞬で男たちは小さく悲鳴をあげ腰を抜かしてしまった。

細身の男の左肩には銃弾が貫いたのか穴が空いていてそこから黒い煙が出ている。数秒経つとその穴は塞がりゆらりと2つの淡い桜色が揺れた。

「それ、もらっていくね？」

その言葉を最後に男たちは床に広がる黒い水溜りに吸い込まれる。床に落ちたUSBと鍵を拾った細身の男は暗闇に溶けて姿を消した。