弐拾肆 ☆* ページ26
夜、部屋で書類に目を通していると、外から何やら聞こえてきた。
この声は…
『Aさんか?』
廊下に出ると、何か耳慣れない、でも切ない歌が聞こえる。
何の歌だろう?
尋ねてみようと、声のする方に向かうと、Aさんが縁側に腰掛け、月を見ながら歌を口ずさんでいるのが見えた。
はっと息を呑む。
白い月の光に照らされたAさんの横顔は、大人びて見えて、とてもーーー
『…綺麗だ』
彼女は、こんなに美しかったろうか?
声を掛ける事が出来ずに、じっと見つめていると、何か気配を感じたのか彼女がこちらを振り返る。
「煉獄さん?
…
煉獄さんも眠れないんですか?」
と、嬉しそうな顔で、いつもの様に微笑む。
「う、うむ!
まぁ、そうだな!
Aさんも眠れないのか?」
珍しく少し歯切れ悪い返事をして、隣に腰掛ける。
「今日は…
『月が綺麗ですね』。」
そう言って、Aさんがはにかんだ様に笑って、俺を見る。
そのままじっと見られて、何故か気まずい。
「あの…
髪を触ってみても良いですか?
いや、あの!
変な意味じゃ無くて!!
月の光に透けて、とても綺麗だなぁって思って…」
「むっ…!
こ、これで良いか?」
頭を下げると、おずおずとAさんの手が俺の頭を撫でて
「…ふふふ
ふわふわしてる…」
と、嬉しそうな声が聞こえる。
胸が早鐘を打つ。
…これはっ…!
堪らなくなり、バッ!と顔を上げると驚いた彼女と目が合う。
ここに来た頃は、まだどこか幼さの残る所もあったのに、何という事か、いつの間にかこんなにも美しくなって…
結い上げた髪のその後れ毛に、俺を見つめるその切れ長の目に、歌を口ずさむその唇に。
俺は、今更驚き、目を逸らす。
カッと、頬が熱くなるのを感じる。
「こんな所に長居をすると風邪を引く!
もう、寝よう!」
これ以上ここに居ると、変な事を口走りそうな気がして立ち上がる。
「そうですね。
寝ましょうか。」
と立ち上がった彼女がよろめく。
思わず彼女の支えようとすると、腕の中に彼女がすっぽりと納まった。
小さくて、柔らかくて、暖かくて…
「煉獄さん?」
彼女が俺の顔を見上げる。
「むっ!
いやっ!
すまなかった!!
では、部屋まで送ろう!」
そう言って、彼女を部屋へと送って行った。
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華(プロフ) - honey milkさん» あとは文字数制限ギリギリのお話があるので、色々追加出来ないと言うのもあります。沢山のご指摘、質問ありがとうございました。何せこのお話は最初の作品で勢いで書いた所が多いので、至らぬ点が多々あるかと思いますが温かく見て貰えると嬉しいです☺️ (2021年11月6日 1時) (レス) id: e9517aa429 (このIDを非表示/違反報告)
華(プロフ) - honey milkさん» 壱拾肆:(照)→夢主が現れた時に何も持ってない「裸」だった事を思い出して恥ずかしがってると言う事です。 ☆*:以前コメントで、「〜side」を付けてほしいとあったのですが、私が台本書きはしっくり来ないのでタイトルにつけました。 (2021年11月6日 1時) (レス) id: e9517aa429 (このIDを非表示/違反報告)
華(プロフ) - honey milkさん» 章名について:呼吸の数字か旧漢字だったので、それに揃えてます。書き始めた頃、こんなに長くなる予定ではなかったので…本編分に関しては一応完結してるので、章名は変更する事を今は考えてません。 (2021年11月6日 1時) (レス) id: e9517aa429 (このIDを非表示/違反報告)
華(プロフ) - honey milkさん» 壱、肆、拾:脱字、変換ミス、誤字です。訂正しました。 壱拾弐:「取り付く島(漢字にしますね)もない」で正しいです。言った事を聞き入れてもらえない、みたいなニュアンスです。 (2021年11月6日 1時) (レス) id: e9517aa429 (このIDを非表示/違反報告)
華(プロフ) - honey milkさん» honey milk様、沢山のコメントありがとうございます(*´ `)細かい所まで見て下さっててとても嬉しいです。指摘も章名があるので分かりやすくて助かりました! ご指摘について、以下回答です。 (2021年11月6日 1時) (レス) id: e9517aa429 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:華 | 作者ホームページ:
作成日時:2020年10月28日 10時