壱拾肆 ☆* ページ16
Aさんがうちに来ると決まって直ぐ
『大事な客人をお館様から預かった故、準備を頼む。』
と鴉に千寿郎への手紙をもたせた。
帰りの馬車では、余程疲れていたのであろう。
彼女は俺の肩に頭を預けて、無防備にすやすやと眠ってしまった。
そっと顔を見ると、白い顔に切れ長の目を縁取る長い睫毛、艷やかな唇が目に入る。
「…可愛らしいな」
そう呟いてはっとする。
俺は何を言ってるんだ。
目を逸らしてAさんの心地よい暖かさを肩に感じながら、窓の外に視線を移す。
Aさんを自宅に連れて帰ることに、ウキウキとしている自分に気付く。
「こんなに可愛らしい人が来てくれたら、誰でもこんな気持ちになるだろう!」
この気持ちに理由をつけて、俺も目を閉じる。
家に着き、Aさんを父上と千寿郎に引き合せる。
父上がAさんに失礼な事を言うのではと心配したが、杞憂で済んだ。
きっと父上も、Aさんに母上の面影を見つけたのだろう。
Aさんを部屋に案内し、俺は千寿郎の稽古を見てやっていると廊下の端から、チラチラとAさんがこちらの様子を伺っているのが見えた。
どうしたのかと聞くと、足りないものがあると言う。
確かにAさんは、何も持たず(照)に来たのだから色々と揃えないと困るだろう!
早速買い物へと行く事にした。
色が白いので淡い色の着物も、濃い色の着物も素晴らしく似合う。
褒められてはにかんでいる様子も、初々しくて可愛らしい。
櫛が欲しいと言われた時は、昔なら櫛を求婚の意味で贈る習わしがあったかと思ったが、何せ本人が全く知らない様子だったので、俺も何も言わなかった。
そんな事を言われても困るだろうしな!
甘味屋に誘った時に、腹が鳴ったのを真っ赤になって恥ずかしがる顔。
芋ようかんを美味しそうに頬張る様。
これからは、家に帰ればAさんが待っていてくれる。
そう考えると、知らず知らずの内に胸が弾むのを感じた。
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華(プロフ) - honey milkさん» あとは文字数制限ギリギリのお話があるので、色々追加出来ないと言うのもあります。沢山のご指摘、質問ありがとうございました。何せこのお話は最初の作品で勢いで書いた所が多いので、至らぬ点が多々あるかと思いますが温かく見て貰えると嬉しいです☺️ (2021年11月6日 1時) (レス) id: e9517aa429 (このIDを非表示/違反報告)
華(プロフ) - honey milkさん» 壱拾肆:(照)→夢主が現れた時に何も持ってない「裸」だった事を思い出して恥ずかしがってると言う事です。 ☆*:以前コメントで、「〜side」を付けてほしいとあったのですが、私が台本書きはしっくり来ないのでタイトルにつけました。 (2021年11月6日 1時) (レス) id: e9517aa429 (このIDを非表示/違反報告)
華(プロフ) - honey milkさん» 章名について:呼吸の数字か旧漢字だったので、それに揃えてます。書き始めた頃、こんなに長くなる予定ではなかったので…本編分に関しては一応完結してるので、章名は変更する事を今は考えてません。 (2021年11月6日 1時) (レス) id: e9517aa429 (このIDを非表示/違反報告)
華(プロフ) - honey milkさん» 壱、肆、拾:脱字、変換ミス、誤字です。訂正しました。 壱拾弐:「取り付く島(漢字にしますね)もない」で正しいです。言った事を聞き入れてもらえない、みたいなニュアンスです。 (2021年11月6日 1時) (レス) id: e9517aa429 (このIDを非表示/違反報告)
華(プロフ) - honey milkさん» honey milk様、沢山のコメントありがとうございます(*´ `)細かい所まで見て下さっててとても嬉しいです。指摘も章名があるので分かりやすくて助かりました! ご指摘について、以下回答です。 (2021年11月6日 1時) (レス) id: e9517aa429 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:華 | 作者ホームページ:
作成日時:2020年10月28日 10時