弐 ページ10
*
清々しい朝の空気が、汗ばんだ肌にとても心地良い。
山々は青く色づき、目にも鮮やかだ。
きっと結界の外はもう夏がそこまで来ているのだろうと、青空に浮かぶ白い雲を見ながら思った。
神獣だと分かった日から、もうどれ位経ったんだろう。
杏寿郎の胸位までしか無かった背丈も、もう肩まで伸びた。
鬼婆に襲われたあの日から、
どうしても腕力が劣る私の為に、杏寿郎は妖力を帯びた扇を作って、それを尻尾に装備出来る方法を教えてくれた。
毎日沢山お稽古したし、少しは強くなったと思う。
でも、杏寿郎としかお稽古をしてないから、いつも負けてばかりでよく分からない。
「杏寿郎、私、少しは強くなったかな?」
「うむ!
雑魚相手なら十分勝てるだろう!
A、よく頑張ったな!」
杏寿郎は目を細めて、私の頭をワシャワシャと撫でてくれた。
私はその手を両手で掴んで、小首を傾げ杏寿郎を見上げる。
「本当?
じゃあ、もうお外に出れる?」
私がそう聞くと、杏寿郎は表情を曇らせる。
「外に、出たいのか?」
「そりゃあ、外にも出たいけど……
私、杏寿郎のお手伝いがしたいの。
助けて貰った恩返しもしたいし。
ねっ、お願いっ!」
手を合わせて必死に拝む私を見て、杏寿郎は腕を組み、目を瞑って悩んでいたけれど
「……明日にでも、腕試しに行ってみるか」
と言ってくれた。
「やった!
杏寿郎、ありがとう!
大好き!」
私はそう言うと、ギュッと杏寿郎に抱きついた。
「良かったですね、Aさん。
さぁ、もうすぐ朝餉の準備も出来ますよ。
今日はさつまいもご飯です!」
それを聞いた杏寿郎が、元気に立ち上がる。
「む! それは楽しみだな!
よし、さっさと行水をして朝餉にしよう!」
「私、もうお腹ぺっこぺこ」
私のお腹もぐーっと空腹を主張して、それを聞いた二人が顔を見合わせて吹き出した。
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華(プロフ) - 龝さん» あきちゃん、コメントありがとうです(*´ `)もう、夢主ちゃんにグイグイ押されてコン寿郎はタジタジです(*´艸`)真っ赤になる兄貴は可愛らしいですよね(*//艸//)いえいえそんな…!お恥ずかしい(汗)素敵なコメントありがとうね! (2021年6月24日 12時) (レス) id: e9517aa429 (このIDを非表示/違反報告)
龝(プロフ) - 華さん、第二部、お疲れ様でした!m(_ _)m垂れた前髪の隙間から見える兄貴の赤面には萌えますね…!(*´∇`*)第三部がとても楽しみです…!またまた情景描写に心打たれることでしょう…!更新、お疲れ様でした!m(_ _)m (2021年6月24日 10時) (レス) id: fa76bf1609 (このIDを非表示/違反報告)
華(プロフ) - 彩乃さん» ゆめこさん、コメントありがとうです(*´ `) 本当にあっという間ですね(汗)何故でしょう…?きっと兄貴は、自分に対して言い訳をして思い込もうとしてるんです。頭を垂れたのはどうしてでしょうか…?(*´艸`)いつも沢山ありがとう! (2021年6月23日 18時) (レス) id: e9517aa429 (このIDを非表示/違反報告)
華(プロフ) - 衣世さん» 衣世様、お久しぶりです(*´ `)今は全体で言うと、起承転結の転位のイメージですのでもうしばらくお付き合い下さいね(*´∀`*)子狐ちゃん頑張りました。衣世様にドキドキをお届け出来て嬉しいです(*´艸`)コメントありがとうございました! (2021年6月23日 18時) (レス) id: e9517aa429 (このIDを非表示/違反報告)
彩乃(プロフ) - 華さん、第二章お疲れさまでした!!なんだかあっという間に感じます……笑 狐ちゃんの想いが兄貴に届くといいですね!忘れられないのは仕方ないけれど、兄貴もヤキモチ妬くくらい好きなんでしょうから笑 吸血鬼も面白そうですね! (2021年6月23日 10時) (レス) id: 555a9d3211 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:華 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=punishop
作成日時:2021年4月24日 10時