【妖狐】金の神様２【煉獄杏寿郎】

　伍　☆* ページ7

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　夕餉の準備が済んだので、僕は兄上達を探して部屋を見に行った。


「兄上、夕餉の準備が出来ました」

　兄上の部屋の外からそう声を掛けるけれど、返事がない。

　ここじゃなかったかな？と、そっと障子を開けると兄上とAさんが寄り添って眠っているのが見えた。

　二人のその安心しきった顔に、僕は思わず笑みを漏らす。




　兄上は、Aさんが来てから口には出さないけれど、幸せそうな顔をされる事が増えた。



　“A”さんが身罷られてからの兄上は、見ているこちらの方が辛い程落ち込まれて、一時は部屋に引き篭もってしまう程だった。

　その時の僕は、心配はするものの何と言葉を掛けたらいいか分からなくて、どうする事も出来なかった。


　しばらく経ったある日、兄上は部屋から出てきて

「心配をかけたな」

と一言言って、僕の頭を撫でながら何事もなかったかの様に笑いかけてくれたんだ。


　こんな時にも、僕の事を思い遣って笑ってくれる兄上に対して、何も出来なかった我が身の不甲斐なさが辛かった。



　兄上は毎夜見回りに出られる。

　勿論、領分を荒らすものや災厄を追い払っているのだろうけど。


　僕を気遣って、僕が居ない所でしか、悲しむ事が出来ないんじゃないか？

　不意に見せる、それまで見たことの無い寂しい表情を見るにつけ、僕はそう思って申し訳ない気持ちで一杯になった。



　Aさんが、兄上の心の穴を埋めてくれたら良いのだけれど。

　兄上がAさんを優しく見つめる姿を見る度に、僕はそう願う。


　きっと兄上は、Aさんの事を憎からず思っている。


　だけどAさんは、兄上の事をどう思ってるんだろう。

　僕達の顔を舐めたり、布団に入ったりする様子じゃ、まだまだ何も意識をしてなさそうだけど。




　兄上の幸せを願って、僕はそっと障子を閉める。


　二人の眠りを妨げない様に。

　どうかこの二人の穏やかな時が末永く続きますように、と願いながら。

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