雷轟 壱 ページ47
*
「……A
A」
遠くで名を呼ばれて、深い眠りの淵から意識がゆっくりと浮上する。
「……ん……?
杏寿郎……?」
雨の匂いがする。
耳を澄ますと、ポツポツと雨の音がしている。
どうやら、龍神との交渉は上手く行ったようだ。
まだ重い瞼をごしごしと擦って目を開くと、目の前に杏寿郎の顔があって胸がドキンと跳ねる。
杏寿郎の頬はほんのり赤くて、ふわりとお酒の匂いがした。
どうやら、縁側に座ったまま寝てしまっていたらしい。
雨雲が少し明るくなった空に流れ込み、雨がポツポツ降っている。
もうすぐ夜明けの様だ。
「おはよう。
雨、降ってるね。
良かった。
お疲れ様でした」
「ああ、首尾は上々だ」
上々と言う割には杏寿郎の声は低く、顔はひどく不機嫌そうに見える。
どうしたんだろう?
小首を傾げ見上げると、杏寿郎はジッと私の目を見て口を開いた。
「――外に出たのか?」
その一言に、一瞬の内に目が覚めた。
どうしよう?
すごく怒ってる?
「――うん
昨日祠守りの寛太さんがね、病気で倒れたの。
どうしても放っておけなくて治癒の術を……
あ、ちゃんと唇は使わなかったよ!」
「当たり前だ!
寛太だと?
男か?
君はそいつに姿を見られたのか?」
「……うん
でも、相手は病人だし、私も稽古して強くなったから心配しなくて大丈夫……」
「馬鹿者!!」
空気を震わす大声に、身がすくむ。
「君は君自身を全く分かってない!
君の姿を見た人間が、どう思うと思う?」
「……え?」
「きっと、その寛太やらは今日も明日もここに来るぞ!
君の姿を追い求めてな!」
「……何で?」
「君が美しいからだ!
妖怪ならいざ知らず、その姿を見て、心を奪われない人間など居るものか!
君はその男の想いに報いてやる事が出来るのか?
人と
――俺達
杏寿郎は眉間にシワを寄せ、苦しげにそう言った。
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華(プロフ) - 龝さん» あきちゃん、コメントありがとうです(*´ `)もう、夢主ちゃんにグイグイ押されてコン寿郎はタジタジです(*´艸`)真っ赤になる兄貴は可愛らしいですよね(*//艸//)いえいえそんな…!お恥ずかしい(汗)素敵なコメントありがとうね! (2021年6月24日 12時) (レス) id: e9517aa429 (このIDを非表示/違反報告)
龝(プロフ) - 華さん、第二部、お疲れ様でした!m(_ _)m垂れた前髪の隙間から見える兄貴の赤面には萌えますね…!(*´∇`*)第三部がとても楽しみです…!またまた情景描写に心打たれることでしょう…!更新、お疲れ様でした!m(_ _)m (2021年6月24日 10時) (レス) id: fa76bf1609 (このIDを非表示/違反報告)
華(プロフ) - 彩乃さん» ゆめこさん、コメントありがとうです(*´ `) 本当にあっという間ですね(汗)何故でしょう…?きっと兄貴は、自分に対して言い訳をして思い込もうとしてるんです。頭を垂れたのはどうしてでしょうか…?(*´艸`)いつも沢山ありがとう! (2021年6月23日 18時) (レス) id: e9517aa429 (このIDを非表示/違反報告)
華(プロフ) - 衣世さん» 衣世様、お久しぶりです(*´ `)今は全体で言うと、起承転結の転位のイメージですのでもうしばらくお付き合い下さいね(*´∀`*)子狐ちゃん頑張りました。衣世様にドキドキをお届け出来て嬉しいです(*´艸`)コメントありがとうございました! (2021年6月23日 18時) (レス) id: e9517aa429 (このIDを非表示/違反報告)
彩乃(プロフ) - 華さん、第二章お疲れさまでした!!なんだかあっという間に感じます……笑 狐ちゃんの想いが兄貴に届くといいですね!忘れられないのは仕方ないけれど、兄貴もヤキモチ妬くくらい好きなんでしょうから笑 吸血鬼も面白そうですね! (2021年6月23日 10時) (レス) id: 555a9d3211 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:華 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=punishop
作成日時:2021年4月24日 10時