【妖狐】金の神様２【煉獄杏寿郎】

　漆 ページ28

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　湯殿に入ってお湯をかかると、体のあちこちがすごくしみた。

　よく見ると、体中に小さな擦り傷が沢山出来ている。

　多分大蛇(おろち)と戦った時に出来た傷だろう。


　腕の所には大きな痣が出来ている。

　黒羽に締め上げられた時の痣だ。


「……黒羽、か」

　天狗には初めて会ったけど、綺麗な、でも冷たい目の男の人だった。

　杏寿郎とは知り合いみたいだったな。

　また、来ると言っていたけれど……


　その時、首を舐められて気持ち悪かった事を思い出して、その場所をゴシゴシと手ぬぐいで赤くなるまで擦って洗った。

　洗い過ぎて少しヒリヒリしたけれど、洗っても洗っても気持ち悪くて仕方なかった。


　怪我を庇うようにして、ゆっくりと湯船に浸かって、ふぅー……と息を吐く。

　手足を伸ばして、浴槽の縁に頭を乗せて天井を仰いだ。


『俺のAに触るなっ！！』

　ふと、そう言っていた杏寿郎を思い出して、口元が緩む。

　いや、『俺の食い物』って意味だろうけど、何だろう、凄くこそばゆくて嬉しい。

　私は緩みっぱなしの頬を抑えて、気恥ずかしさからぶくぶくと顔の半分位までお湯に浸かった。



　そうだ、杏寿郎もお風呂に入るんだから、あまり長湯してはいけない。

　急いでお風呂から上がって、バタバタと杏寿郎の部屋に向かう。


「お風呂上がったよ、どうぞ入って！」

　そっと障子を開けてそう声をかけると、杏寿郎はこちらを振り向き、

「あぁ！ もう上がったのか？

　疲れただろう？

　今日はゆっくりとお休み」

と言って私の頭をポンと撫でる。

　そして、はたと動きを止め首を指差して言った。


「これはどうした？

　赤くなってるぞ」

「あぁ……

　黒羽に舐められた所が気持ち悪くてね、洗ったんだけど擦り過ぎちゃった」

「あれか！」


　杏寿郎は「むぅ…」と唸って腕を組み、私の首を凝視していたけれど、すっと私の首に顔を寄せると、優しく唇を這わせた。

　捌→←　陸

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