陸 ページ27
*
「Aはやらんっ!!」
飛んでいく黒羽の背中に、杏寿郎が大声で怒鳴って空気がビリビリと揺れた。
私はその大声に思わず耳を塞いでしまう。
ふぅ、と杏寿郎が息を吐いてこちらを向いた。
「……A、大丈夫か?
怪我は無いか?」
「うん、大丈夫」
「そうか……良かった。
変な事に巻き込んですまなかったな。
……さぁ、屋敷に帰ろう」
杏寿郎はそう言って私を抱き上げた。
私はキュッと杏寿郎の首に腕を回して顔を杏寿郎の肩に乗せた。
「行くぞ!」
杏寿郎が地面をドンと蹴って、私達は屋敷へ向かって風のように空を駆け抜けた。
風になびく杏寿郎のふわふわの髪が私の頬を撫でて、ふわりといい匂いが鼻をくすぐる。
あぁ、やっぱり胸はドキドキと苦しいけれど杏寿郎の腕の中が一番良い。
この体温も、この匂いも、こうやって触れるのは、全部、全部、杏寿郎が良い。
そう思って、私は杏寿郎の胸に頬を擦り寄せた。
何故か鼻の奥がツンとして、涙が出そうになる。
今頃になって怖くなったのかな?
そう思って、杏寿郎に回した腕に力を込めてしがみついた。
暫くすると見慣れた山々が見えて来て、私達は屋敷に帰り着く。
玄関を開けると、千寿郎がパタパタとやって来て出迎えた。
「お帰りなさい!
大丈夫でしたか?
お戻りが遅かったので心配してました」
「あぁ、大事ない!」
「
「Aが見事に討伐したぞ!」
「そうでしたか!
それは、おめでとうございます!」
「千寿郎、ありがとう。
心配かけてごめんね」
「いえいえ、ご無事なら良いんです。
お疲れでしょう?
湯殿の準備しておりますから、どうぞ湯浴みして下さい」
「杏寿郎、お先にどうぞ」
「俺はちょっと部屋に寄りたいから、Aから入ると良い!」
杏寿郎はそう言うと、さっさと部屋へと戻って行く。
お風呂を譲ってくれたんだな、と思ってその優しさに心がふんわり温かくなる。
私はその厚意に甘えて、お風呂を先に頂く事にした。
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華(プロフ) - 龝さん» あきちゃん、コメントありがとうです(*´ `)もう、夢主ちゃんにグイグイ押されてコン寿郎はタジタジです(*´艸`)真っ赤になる兄貴は可愛らしいですよね(*//艸//)いえいえそんな…!お恥ずかしい(汗)素敵なコメントありがとうね! (2021年6月24日 12時) (レス) id: e9517aa429 (このIDを非表示/違反報告)
龝(プロフ) - 華さん、第二部、お疲れ様でした!m(_ _)m垂れた前髪の隙間から見える兄貴の赤面には萌えますね…!(*´∇`*)第三部がとても楽しみです…!またまた情景描写に心打たれることでしょう…!更新、お疲れ様でした!m(_ _)m (2021年6月24日 10時) (レス) id: fa76bf1609 (このIDを非表示/違反報告)
華(プロフ) - 彩乃さん» ゆめこさん、コメントありがとうです(*´ `) 本当にあっという間ですね(汗)何故でしょう…?きっと兄貴は、自分に対して言い訳をして思い込もうとしてるんです。頭を垂れたのはどうしてでしょうか…?(*´艸`)いつも沢山ありがとう! (2021年6月23日 18時) (レス) id: e9517aa429 (このIDを非表示/違反報告)
華(プロフ) - 衣世さん» 衣世様、お久しぶりです(*´ `)今は全体で言うと、起承転結の転位のイメージですのでもうしばらくお付き合い下さいね(*´∀`*)子狐ちゃん頑張りました。衣世様にドキドキをお届け出来て嬉しいです(*´艸`)コメントありがとうございました! (2021年6月23日 18時) (レス) id: e9517aa429 (このIDを非表示/違反報告)
彩乃(プロフ) - 華さん、第二章お疲れさまでした!!なんだかあっという間に感じます……笑 狐ちゃんの想いが兄貴に届くといいですね!忘れられないのは仕方ないけれど、兄貴もヤキモチ妬くくらい好きなんでしょうから笑 吸血鬼も面白そうですね! (2021年6月23日 10時) (レス) id: 555a9d3211 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:華 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=punishop
作成日時:2021年4月24日 10時