伍 ページ26
*
「杏寿郎……止めて。
私は大丈夫だから……」
「むっ!
君にこんな狼藉を働いた男を、庇うと言うのか?」
杏寿郎は振り向き、私の顔をギロリと睨んだ。
あまりの眼力に思わず目を逸らして逃げ出してしまいたくなるのをぐっと堪えて、その目を見つめ返す。
何だかよく分からないけれど、話を聞けばこの男は杏寿郎の知り合いの様だし、この狼藉も一応(?)杏寿郎の事を思っての事の様だ。
怖い目には合わされたけれど、怪我もさせられていない。
寧ろ私の方が逃げる為とは言え、腕に思い切り噛み付いて怪我をさせてしまっている。
私は杏寿郎の陰からチラリと顔を出して、黒羽に話しかけた。
「……腕、思いっきり噛んじゃったけど大丈夫でしたか?」
「あぁ、これ位かすり傷だ」
「じゃあ……それでお相子って事で。
ねっ?
杏寿郎、それで良いでしょう?」
そう私がお願いすると、杏寿郎はかなり不服そうな顔をしていたけれど、
「……君がそこまで言うなら……」
と言って、頬を膨らませ狐火を引っ込めた。
可愛い。
違う。
「お嬢ちゃんのお許しも出た事だし、また仲良くしようぜぇ。
次来る時は、ちゃんと手土産持って来てやるからよ。
お嬢ちゃん、宜しくな!」
「俺は全く納得してないが、Aがこう言ってるから許してやるだけだ。
――だが、次はないからな。
分かったな、黒羽」
「あぁ、怖い怖い。
あ、自己紹介まだだったな。
俺は天狗の黒羽。
煉獄とは、まぁ古い付き合いだ。
宜しくなぁ」
そう言うと黒羽は、大きな羽をバサリと広げ宙に舞い上がった。
「じゃあ、俺は山に帰るわ。
またなぁ」
「もう来なくて良いぞ!」
黒羽はニヤリと笑うと、片手を上げ背を向ける。
そして飛び去ろうとして、はたと止まった。
何だろうと見ていると、こちらを振り向いて
「良いじゃねぇか、その娘。
この俺に一太刀浴びせようって心意気が良い。
見た目も悪くねぇ。
煉獄に飽きたら、俺の所に嫁に来な!」
と言って笑いながら飛び去って行った。
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華(プロフ) - 龝さん» あきちゃん、コメントありがとうです(*´ `)もう、夢主ちゃんにグイグイ押されてコン寿郎はタジタジです(*´艸`)真っ赤になる兄貴は可愛らしいですよね(*//艸//)いえいえそんな…!お恥ずかしい(汗)素敵なコメントありがとうね! (2021年6月24日 12時) (レス) id: e9517aa429 (このIDを非表示/違反報告)
龝(プロフ) - 華さん、第二部、お疲れ様でした!m(_ _)m垂れた前髪の隙間から見える兄貴の赤面には萌えますね…!(*´∇`*)第三部がとても楽しみです…!またまた情景描写に心打たれることでしょう…!更新、お疲れ様でした!m(_ _)m (2021年6月24日 10時) (レス) id: fa76bf1609 (このIDを非表示/違反報告)
華(プロフ) - 彩乃さん» ゆめこさん、コメントありがとうです(*´ `) 本当にあっという間ですね(汗)何故でしょう…?きっと兄貴は、自分に対して言い訳をして思い込もうとしてるんです。頭を垂れたのはどうしてでしょうか…?(*´艸`)いつも沢山ありがとう! (2021年6月23日 18時) (レス) id: e9517aa429 (このIDを非表示/違反報告)
華(プロフ) - 衣世さん» 衣世様、お久しぶりです(*´ `)今は全体で言うと、起承転結の転位のイメージですのでもうしばらくお付き合い下さいね(*´∀`*)子狐ちゃん頑張りました。衣世様にドキドキをお届け出来て嬉しいです(*´艸`)コメントありがとうございました! (2021年6月23日 18時) (レス) id: e9517aa429 (このIDを非表示/違反報告)
彩乃(プロフ) - 華さん、第二章お疲れさまでした!!なんだかあっという間に感じます……笑 狐ちゃんの想いが兄貴に届くといいですね!忘れられないのは仕方ないけれど、兄貴もヤキモチ妬くくらい好きなんでしょうから笑 吸血鬼も面白そうですね! (2021年6月23日 10時) (レス) id: 555a9d3211 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:華 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=punishop
作成日時:2021年4月24日 10時