【妖狐】金の神様２【煉獄杏寿郎】

　肆 ページ25

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　ゆっくりと落ちて行く闇の中、視界の端に切迫した表情の杏寿郎が見えた。


　と、次の瞬間ガシッと衝撃が走って、伸ばした手のひらが力強く掴まれ引き寄せられる。

　刹那、私は杏寿郎の腕に力いっぱい抱きしめられていた。


「杏寿郎っ！ 杏寿郎っ！！」

「Aっ！！

　大丈夫かっ？」

「……ふ……ぅわあぁぁぁん！！」


　私は杏寿郎の首にしっかりと抱きついた。

　温かい腕に包まれて、安堵の涙が次から次へと溢れる。

　幼子の様に大声を出してしゃくり上げる私を、杏寿郎が息苦しい位にきつく、きつく抱き締めた。

　私達は抱き締めあったまま、ゆっくりと地上に降りる。


「……捕まって……ごめんなさい……

　逃げれなかったの……」

「君は何も悪くない！

　悪いのは、奴だ！！」


　杏寿郎がキッと黒羽を睨みつけると、黒羽はしばらく私達の様子を見ていたが、突然吹き出してひらりと地上に舞い降りた。

　杏寿郎は私を自身の背後に隠す。


「わりぃ、わりぃ。

　そんなに睨むなよ。

　お前のそんな顔見た事無かったし、『家族のようなもの』なんて言うからさぁ。

　ちょいと揶揄(からか)っただけじゃねぇか」

「……全く笑えんな」


　冷たく返事する杏寿郎に、黒羽は真顔を向ける。


「煉獄、もう一度だけ確認する。

　お前、神獣の力を手に入れて勢力を広げようなんて考えてないんだな」

「そんな事は考えておらん！

　誓って俺は今の場所を離れるつもりは無いし、領分を広げようなんて事は微塵も思っておらん！」


　黒羽はその返答を聞いて、ふ、と表情を和らげた。


「お前に限ってそんな事はねぇだろうとは思ったんだけどさぁ、親父が疑っててなぁ。

　大事になる前に俺が聞きに来たって訳だ」

「大天狗殿が？」

「ああ。

　親父は短気だからな。

　天狗軍団引き連れてお前の所に行くって言うからさぁ、『そんなに大事にするな、俺が話を聞いて来るから』って、この俺様が、口利きしてやったんだぜ。

　感謝してもらいたい位だなぁ」

「ふむ……

　気遣って貰った事には感謝するが、Aに対する無礼は許せん！

　黒羽、覚悟しろ！！

　焼き鳥にしてくれる！！」

「待てって！！

　俺の話を聞いてたか？

　ちょっと手荒だったかも知れねぇが、俺はお前の事を思ってだなぁ！

　ほら、落ち着けって！！」


　杏寿郎の周りに、超特大の狐火がメラメラと燃え盛るのを見て、黒羽はタジタジと後ずさった。

　伍→←　参

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