黒羽 壱 ページ22
*
何が起きたのっ!?
私の体は見知らぬ誰かの太い腕に羽交い締めにされていて、全く身動きを取る事が出来ない。
その腕の持ち主を確認しようと必死に振り向いた私の目に入ったのは、月夜に溶け込む『黒』
――その男は黒い衣を身に纏い、黒い瞳に黒い髪、そして真っ黒な大きな翼を持っていた。
「Aっ!!」
「杏寿郎っ!!」
声がする方を振り向けば、遥か眼下から焦った表情の杏寿郎が追いかけてくるのが見えた。
私は背後の男をキッと睨みつける。
「あんた誰っ!?
離してよっ! 馬鹿っ! 変態っ!」
私はこの無礼な男から逃れようと必死に身をよじる。
けれど、腕の力は全然弱まる気配がない。
くっ……!
ならばっ!!
私は狐火で男の翼を目掛けて攻撃を繰り出すけれど、羽ばたきが巻き起こす風であっと言う間に炎は吹き飛ばされてしまう。
それならばと、辛うじて動く指の爪で引っかけば、私の体に鞭のように巻きついた腕を、更にきつく締め上げられて肋が軋んで息が詰まった。
「かはっ……!」
全く手も足も出ないなんて……悔しいっ……
あまりの息苦しさに私の目には涙が滲んだ。
「狐のお嬢ちゃん、ちょっとお転婆が過ぎるなぁ。
大人しくしてないと、お兄さん本気で怒っちゃうよ?」
耳元で男の冷たい声が聞こえて、私は動きを止めた。
おどけて言ってるけれど本気だと伝わってきて、思わずぶるりと身震いする。
私達に追いついた杏寿郎が、鋭い目つきで男を見据えた。
「貴様!
一体何のつもりだ!!」
「よぉ、煉獄。
久し振りだなぁ」
杏寿郎の知り合い?
私は驚いて杏寿郎の方を見る。
「久し振りに顔を出したかと思えば、この狼藉は何の真似だ、黒羽!」
「……妙な噂話を耳にしてなぁ。
事の次第を聞きに来たってぇ訳だ」
「噂話?」
「お前、神獣について調べてるらしいじゃねぇか。
まさかとは思うが、お前、神獣の力を手に入れようなんて思ってはねぇよなぁ?」
『あ、それ私の事』
と思ったけど、『神獣は
もしかして、これってバレたらかなり良くないやつだよね?
杏寿郎を見ると、静かな怒りの気配がヒリヒリと肌に刺さって私は思わず息を呑んだ。
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華(プロフ) - 龝さん» あきちゃん、コメントありがとうです(*´ `)もう、夢主ちゃんにグイグイ押されてコン寿郎はタジタジです(*´艸`)真っ赤になる兄貴は可愛らしいですよね(*//艸//)いえいえそんな…!お恥ずかしい(汗)素敵なコメントありがとうね! (2021年6月24日 12時) (レス) id: e9517aa429 (このIDを非表示/違反報告)
龝(プロフ) - 華さん、第二部、お疲れ様でした!m(_ _)m垂れた前髪の隙間から見える兄貴の赤面には萌えますね…!(*´∇`*)第三部がとても楽しみです…!またまた情景描写に心打たれることでしょう…!更新、お疲れ様でした!m(_ _)m (2021年6月24日 10時) (レス) id: fa76bf1609 (このIDを非表示/違反報告)
華(プロフ) - 彩乃さん» ゆめこさん、コメントありがとうです(*´ `) 本当にあっという間ですね(汗)何故でしょう…?きっと兄貴は、自分に対して言い訳をして思い込もうとしてるんです。頭を垂れたのはどうしてでしょうか…?(*´艸`)いつも沢山ありがとう! (2021年6月23日 18時) (レス) id: e9517aa429 (このIDを非表示/違反報告)
華(プロフ) - 衣世さん» 衣世様、お久しぶりです(*´ `)今は全体で言うと、起承転結の転位のイメージですのでもうしばらくお付き合い下さいね(*´∀`*)子狐ちゃん頑張りました。衣世様にドキドキをお届け出来て嬉しいです(*´艸`)コメントありがとうございました! (2021年6月23日 18時) (レス) id: e9517aa429 (このIDを非表示/違反報告)
彩乃(プロフ) - 華さん、第二章お疲れさまでした!!なんだかあっという間に感じます……笑 狐ちゃんの想いが兄貴に届くといいですね!忘れられないのは仕方ないけれど、兄貴もヤキモチ妬くくらい好きなんでしょうから笑 吸血鬼も面白そうですね! (2021年6月23日 10時) (レス) id: 555a9d3211 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:華 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=punishop
作成日時:2021年4月24日 10時