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煉獄先生に連れられて社会科準備室に入ると、部屋の中は外の喧騒が嘘のように静かだった。
先生は振り向くと、私の目を見て優しく微笑む。
「A、偉かったな」
「……え?」
「本当は怖かったんだろう?
頑張ったな」
先生は優しくそう言うと、そっと私を抱き寄せた。
自分でも大丈夫だと思っていたのに、先生に優しくされて、精一杯に虚勢を張っていた心が
私は唇をキュッと噛んで、拳に力を入れた。
そうしないと涙が溢れてしまいそうだった。
そんな私の頭を、先生が何度も何度も優しく撫でてくれる。
「俺の前では強がるな。
ここには俺と君しか居ない。
安心していい」
「……はい」
おずおずと先生の背中に腕を回してシャツを掴むと、力が入って冷たかった指先に、少しづつ血が通って温かさが戻ってくるのが分かった。
先生が私の頭を撫でるたびにその温かさがじんわりと胸に染み渡って、心が
「……怖かった」
「だろうな」
「……でも、逃げる訳には行かなかったんです」
「……うん」
「……お客さんもいるし、折角みんなで準備して来たのに、あんな人達にお店をめちゃくちゃにされたくなかった……」
「……うん」
「……私、頑張らなきゃって……」
「……偉かったな。
すごく、格好良くて……綺麗だった。
惚れ直したぞ!」
「えっ?」
「本当だ!
俺の言葉を疑うのか?」
先生はそっと体を離して、指で私の涙を拭ってくれる。
そして私の顔を覗き込むと、眉尻を下げて少し拗ねたように唇を尖らせた。
「う、疑うだなんて!
そんな事……」
「頑張る君も素敵だが、そんな君を甘やかすのは俺だけの特権だ。
だから存分に甘えてくれ。
A、頑張ったな。
偉いぞ」
甘い声でそう言われて、何だかむず痒くて恥ずかしくなってしまう。
うっとりと目を閉じ、先生の腕の中で温もりに酔いしれて……
突然、私は思い出した。
昨日の夢の事を。
「……っ!」
バッと腕を伸ばして先生の胸を押し返すと、驚いた先生の顔が見えた。
恥ずかしさで、体中が燃える様に熱くなる。
「……A?」
「わ、わわわ私っ!
ももももう行かなきゃ!」
私はズリズリと後ずさると、先生に背を向けて猛ダッシュで社会科準備室から飛び出した。
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華(プロフ) - ゆいさん» ゆい様、いつもコメントありがとうございます(*´ `)うわああぁ、そんなふうに言ってもらってすごく励まされます!これからも拙い文章ですが是非是非よろしくお願いします!(*´艸`*) (2021年9月17日 3時) (レス) id: e9517aa429 (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - 華様 おはようございます!華様の情景が浮かぶ様な素晴らしい話、本当大好きです!!長いなんて思わないくらいいつも楽しい読ませて頂いてます\(//∇//)\ お忙しいのに、いつも更新ありがとうございます!! そして、煉獄先生ー。がんばれー!!次も楽しみです!! (2021年9月16日 8時) (レス) id: c872c7d816 (このIDを非表示/違反報告)
華(プロフ) - ゆいさん» ゆい様、コメントありがとうございます(*´ `)先生はきっと大正軸より少し歳上なので、中身は大人のイメージです。ゆい様の元気の元になれましたか?(*´∀`*)こちらこそありがとうございます!! (2021年9月9日 18時) (レス) id: e9517aa429 (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - 華様 夢主ちゃん、よかったですーやはり、先生は頼りになってかっこいいし、ステキです。、、、最後のムフフな展開もドキドキですーー。今日は仕事がんばろーって、思えました!!ありがとうございました!行ってきます!!(*^ω^*) (2021年9月9日 8時) (レス) id: c872c7d816 (このIDを非表示/違反報告)
華(プロフ) - ゆいさん» ゆい様、コメントありがとうございます(*´ `)連れ去るのも良いけど、夢主ちゃんはきっと最後まで仕事をやり遂げたいだろうな、でも心配だから見守るんだろうな、と言う感じです(*´艸`*) (2021年9月2日 21時) (レス) id: e9517aa429 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:華 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=punishop
作成日時:2021年3月29日 8時