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校内を見回りしている時の事だった。
ダダン!
突然、上の階から大きな音と小さな悲鳴の様な物が聞こえて来た。
上の階にはAの教室がある。
俺は嫌な予感に急かされる様に、階段を駆け上がる。
目に入ったのは廊下に溢れかえる人だかり。
それを必死に掻き分け声の方向へと進むと、Aの教室に辿り着く。
教室の入口辺りは騒ぎを聞きつけた生徒達で、黒山の人だかりだった。
はやる心を抑えて、教室の中を覗くと、
「……他のお客様のご迷惑になります。
お食事をなさらないなら、どうぞお引き取りください」
と言って、Aが頭を下げている所だった。
男は対応をしているAに難癖をつけて、騒ぎを起こしている様だ。
Aを助けようと教室の中に踏み出して、その凛とした表情に俺は息を呑んだ。
大の男相手に恐ろしいだろうに、背筋をピンと伸ばし、目は真っ直ぐに相手を見据えている。
「あなた達は、まだ何も購入してないですし、他のお客様にご迷惑をかける様な人はお客様ではありません。
どうぞお引き取りください」
Aは毅然とした態度で、ごねる男達を相手にそう言ってのけた。
「……っ!
コイツっ!!」
迫力負けして口では勝てない男は、Aに向かって拳を上げる。
その瞬間、俺は教室に駆け込んで男の振り上げた腕を掴む。
「……大丈夫か?
A?」
Aに声をかけるとギュッと閉じていた目を恐る恐る開き、俺の姿を見つけて一瞬瞳を揺らした。
そして安堵の笑顔を見せてくれる。
「……はい!
大丈夫です!」
「うむ、それは良かった!」
俺はAの無事を確認してから、男に視線を移す。
「……お客人。
これ以上騒ぎを大きくするおつもりなら、共に警察に行って頂く事になるが、どうする?」
「あぁ?
カッコつけんなよ?
……イテテテテッ!」
尚も凄んでくる男の腕をねじ上げ、仲間共々睨みつける。
「ここは皆の迷惑になる。
外に移動して頂こうか。
……君のお友達も一緒にな」
「……警察はヤベーって、ほら帰るぞ」
青くなって逃げ出そうとする男の仲間の肩を掴んで引き留める。
「君達、床に落としたパンのお代を忘れているようだが!」
「……チッ!
釣りはいらねーぜ」
男達が投げ捨てたお札を拾い上げると、丁寧に伸ばしてから彼女に手渡した。
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華(プロフ) - ゆいさん» ゆい様、いつもコメントありがとうございます(*´ `)うわああぁ、そんなふうに言ってもらってすごく励まされます!これからも拙い文章ですが是非是非よろしくお願いします!(*´艸`*) (2021年9月17日 3時) (レス) id: e9517aa429 (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - 華様 おはようございます!華様の情景が浮かぶ様な素晴らしい話、本当大好きです!!長いなんて思わないくらいいつも楽しい読ませて頂いてます\(//∇//)\ お忙しいのに、いつも更新ありがとうございます!! そして、煉獄先生ー。がんばれー!!次も楽しみです!! (2021年9月16日 8時) (レス) id: c872c7d816 (このIDを非表示/違反報告)
華(プロフ) - ゆいさん» ゆい様、コメントありがとうございます(*´ `)先生はきっと大正軸より少し歳上なので、中身は大人のイメージです。ゆい様の元気の元になれましたか?(*´∀`*)こちらこそありがとうございます!! (2021年9月9日 18時) (レス) id: e9517aa429 (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - 華様 夢主ちゃん、よかったですーやはり、先生は頼りになってかっこいいし、ステキです。、、、最後のムフフな展開もドキドキですーー。今日は仕事がんばろーって、思えました!!ありがとうございました!行ってきます!!(*^ω^*) (2021年9月9日 8時) (レス) id: c872c7d816 (このIDを非表示/違反報告)
華(プロフ) - ゆいさん» ゆい様、コメントありがとうございます(*´ `)連れ去るのも良いけど、夢主ちゃんはきっと最後まで仕事をやり遂げたいだろうな、でも心配だから見守るんだろうな、と言う感じです(*´艸`*) (2021年9月2日 21時) (レス) id: e9517aa429 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:華 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=punishop
作成日時:2021年3月29日 8時