187 ページ44
*
『殴られる!』
そう思った私は、ギュッと目を閉じ体に力を入れて身構えた。
……けれど、中々来るべき衝撃が来ない。
「……大丈夫か?
A?」
一番聞きたかった声が聞こえておずおずと目を開くと、煉獄先生が男の拳をしっかと掴んで立っていた。
思わずホッとして涙が出そうになるけど、きゅっと唇を結んで、笑顔を作る。
「……はい!
大丈夫です!」
「うむ、それは良かった!」
私の返事に煉獄先生は微笑むと、男たちの方に鋭い眼光を向ける。
「……お客人。
これ以上騒ぎを大きくするおつもりなら、共に警察に行って頂く事になるが、どうする?」
「あぁ?
カッコつけんなよ?
……イテテテテッ!」
悪態をつくその男の手を、煉獄先生は赤子の手をひねる様に軽々とねじ上げた。
「ここは皆の迷惑になる。
外に移動して頂こうか。
……君のお友達も一緒にな」
煉獄先生が男の連れにギロリとひと睨みすると、その有無を言わせぬ迫力に男達は青ざめた。
「……警察はヤベーって、ほら帰るぞ」
そう言って出て行こうとする男達の肩を先生が掴んで引き留める。
「君達、床に落としたパンのお代を忘れているようだが」
「……チッ!
釣りはいらねーぜ」
男は無造作に財布から取り出したお札を投げ捨てると、
先生はそのお札を拾って伸ばし、私に渡してくれる。
「怪我はないか?」
「はい!
先生のおかげでみんな助かりました!
ありがとうございました!」
私は先生に背を向けると、お客様達に頭を下げた。
「皆様、ご迷惑をお掛けしました。
引き続きお食事をお楽しみ下さい!」
教室はまた元の穏やかな雰囲気に戻る。
大事にならなくて良かった。
炭治郎君に事情を話して、落ちてしまったパンの追加をお願いしなきゃな。
交代まで、あとひと踏ん張り……
私は、ふぅと息を吐く。
「……君は、大丈夫なのか?」
その様子をじっと見ていたらしい煉獄先生が、こっそりと私に尋ねた。
「はい!
私は全然平気です!
助けてくれてありがとうございました。
交代まで、あと一息ですもん!
頑張ります!」
私がにこっと笑うと、先生は私の顔をじっと見てからポンと頭を撫でる。
「ふむ、では俺もパンを貰おうか!」
そう言うと、先生はパンと飲み物を買って空いている席に座った。
559人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
華(プロフ) - ゆいさん» ゆい様、いつもコメントありがとうございます(*´ `)うわああぁ、そんなふうに言ってもらってすごく励まされます!これからも拙い文章ですが是非是非よろしくお願いします!(*´艸`*) (2021年9月17日 3時) (レス) id: e9517aa429 (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - 華様 おはようございます!華様の情景が浮かぶ様な素晴らしい話、本当大好きです!!長いなんて思わないくらいいつも楽しい読ませて頂いてます\(//∇//)\ お忙しいのに、いつも更新ありがとうございます!! そして、煉獄先生ー。がんばれー!!次も楽しみです!! (2021年9月16日 8時) (レス) id: c872c7d816 (このIDを非表示/違反報告)
華(プロフ) - ゆいさん» ゆい様、コメントありがとうございます(*´ `)先生はきっと大正軸より少し歳上なので、中身は大人のイメージです。ゆい様の元気の元になれましたか?(*´∀`*)こちらこそありがとうございます!! (2021年9月9日 18時) (レス) id: e9517aa429 (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - 華様 夢主ちゃん、よかったですーやはり、先生は頼りになってかっこいいし、ステキです。、、、最後のムフフな展開もドキドキですーー。今日は仕事がんばろーって、思えました!!ありがとうございました!行ってきます!!(*^ω^*) (2021年9月9日 8時) (レス) id: c872c7d816 (このIDを非表示/違反報告)
華(プロフ) - ゆいさん» ゆい様、コメントありがとうございます(*´ `)連れ去るのも良いけど、夢主ちゃんはきっと最後まで仕事をやり遂げたいだろうな、でも心配だから見守るんだろうな、と言う感じです(*´艸`*) (2021年9月2日 21時) (レス) id: e9517aa429 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:華 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=punishop
作成日時:2021年3月29日 8時