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開店から暫くして、お客さんの波も一段落した頃に事件は起こった。
そのお客さんたちは、入ってきた時から何だか嫌な雰囲気だった。
どこの学校の制服だろうか、ちょっと人相の悪い男の子の三人組。
陳列したパンの前でベラベラお喋りをして動かない三人が、他のお客さんの迷惑になっているのを見かねて私はお声掛けをする事にした。
「パンはお決まりになりましたか?
飲み物はレジで注文をお願いしますね」
にこやかに私がそう言うと、その人達は私の顔を舐めるように見てニヤリと笑う。
「わぁ、君可愛いねぇ。
ここ抜けてさ、俺らとどっか良い所に行かない?」
そう言っていきなり腕を掴まれて、私は青ざめた。
「お仕事中ですので無理です。
お客様、手をお放しください」
私は努めて平静を装いながら、相手を刺激しない様に笑顔でその手をそっと払い除ける。
「……イイね。
君みたいな子、俺は好きだなぁ。
お店があるから来れないんだよね?
じゃあ、営業出来なくすれば良いのかな?」
「え?」
男のセリフに私が首を傾げると、その男はニヤリと口の端を上げ、机の上に並べたパンのケースを勢い良く手で払った。
その手は机の端に置いてあったケースを、いとも簡単に床へと落とす。
ダダン!
ケースは派手な音を立てて勢い良く床に落ち、その拍子に中に入っていたパンが床に散らばった。
その凄い音に、一気にみんなの注目が私達に集まる。
――教室に一人位、男の子に居て貰ったら良かったかな。
なんて、どこか頭の端で冷静に考えながら、
「……他のお客様のご迷惑になります。
お食事をなさらないなら、どうぞお引き取りください」
と言って、私は頭を下げた。
――怖い。
逃げたい。
でも、ここで逃げたら他の人が困る。
怖がっているとバレない様に、手の震えをもう片方の手でギュッと押さえつけながら背筋をピンと伸ばし、私は努めて毅然とした態度を取る。
すると、その態度が気に入らなかったのか、男は私の腕を掴むとぐっと顔を近づけて凄んできた。
「お客様は神様だろぉ?
俺達に付き合えよ」
「あなた達はまだ何も購入してないですし、他のお客様にご迷惑をかける様な人はお客様ではありません。
どうぞお引き取りください」
「……っ!
コイツっ!!」
顔を真っ赤にした男の右手が、大きく振りかぶったのが見えた。
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華(プロフ) - ゆいさん» ゆい様、いつもコメントありがとうございます(*´ `)うわああぁ、そんなふうに言ってもらってすごく励まされます!これからも拙い文章ですが是非是非よろしくお願いします!(*´艸`*) (2021年9月17日 3時) (レス) id: e9517aa429 (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - 華様 おはようございます!華様の情景が浮かぶ様な素晴らしい話、本当大好きです!!長いなんて思わないくらいいつも楽しい読ませて頂いてます\(//∇//)\ お忙しいのに、いつも更新ありがとうございます!! そして、煉獄先生ー。がんばれー!!次も楽しみです!! (2021年9月16日 8時) (レス) id: c872c7d816 (このIDを非表示/違反報告)
華(プロフ) - ゆいさん» ゆい様、コメントありがとうございます(*´ `)先生はきっと大正軸より少し歳上なので、中身は大人のイメージです。ゆい様の元気の元になれましたか?(*´∀`*)こちらこそありがとうございます!! (2021年9月9日 18時) (レス) id: e9517aa429 (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - 華様 夢主ちゃん、よかったですーやはり、先生は頼りになってかっこいいし、ステキです。、、、最後のムフフな展開もドキドキですーー。今日は仕事がんばろーって、思えました!!ありがとうございました!行ってきます!!(*^ω^*) (2021年9月9日 8時) (レス) id: c872c7d816 (このIDを非表示/違反報告)
華(プロフ) - ゆいさん» ゆい様、コメントありがとうございます(*´ `)連れ去るのも良いけど、夢主ちゃんはきっと最後まで仕事をやり遂げたいだろうな、でも心配だから見守るんだろうな、と言う感じです(*´艸`*) (2021年9月2日 21時) (レス) id: e9517aa429 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:華 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=punishop
作成日時:2021年3月29日 8時