星降る夜のスターチス【虎】

14 ページ15

.






松倉「やっぱ、嬉しいの？そう言われると」









『え？嬉しいに決まってるよ』








松倉「それは…
　んーん、何でもない！」









『なに？気になる(笑)』









海斗は最後言葉を濁したけれど、私の耳には最後まで聞こえた。









“それは、ちゃかだから？”







こんなの聞いたら自惚れちゃうよ。









私がちゃかちゃんと仲良くしたから海斗が少しでも嫉妬してくれたんじゃないかって、そう考えて思いあがっちゃうから。








こういう女子は、恋愛小説でも少女漫画でも報われない。




いつだって天然で鈍感なふわふわ可愛い女子に持ってかれちゃうのがオチだ。









『あ、なんかあったかいもの持ってくるからまって……わっ！！』









ずっと正座をしていたせいでいきなり立ち上がった瞬間、足の痺れに驚いてよろけた。









次に来るであろう衝撃に身構えたけれど、予想していた痛みはこなくて、









反射的に瞑っていた目をゆっくりと開けると、視界いっぱいに海斗のトレーナー。









『え！え、海斗ごめん！踏んじゃった？痛い？』









松倉「…ほんと気をつけて、怪我するかと思ってまじでびびった」
　









久しぶりに聞いた海斗の低い声に、

私は少しびくっとした。









『ご、ごめん！仕事に支障が
「俺じゃなくてA！…俺は男だから大丈夫」









『ごめんなさい…』









とりあえず、今私が海斗を押し倒しているまずい状態から脱しよう







そう思って身体を起こそうとすると、私の背中にまわる海斗の手に力が入った気がした。






　
　








『海斗、私もう大丈夫だよ？…海斗？』









私が呼びかけても応答がない。かと言って顔を見ようにも海斗の顔は私の頭の上にあるわけで、その表情を読み取ることはできない。






.

15→←13

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す