episode 30 ページ34
お葬式も終わり、かつて四人で歩いた道を、三人で手を繋いで歩いた。
そして無言のまま、家に帰ってきた。
創「ごちそうさま」
『そーちゃんもう食べないの？』
創「うん」
もういいと言うと、創真は自分の部屋へと入っていった。
その日の夜、あれからずっと部屋から出てこない創真が心配になり、Aは彼の部屋をノックした。
そこには以前の自分のように、部屋の隅で呆然としている創真の姿があった。
Aは創真に近づき、隣にそっと寄り添う。
シンと静まりかえる部屋で、時間だけが過ぎていった。
しばらくそうしていると、創真が小さく話し出した。
創「俺な、かーちゃんと約束したんだよ。Aを守るって。」
『うん？』
創「誰かを守るためには、強くならなきゃいけないんだ。
強いやつは誰にも負けないから。
だから、おやじみたいに、強く、なりたくて。
料理ももっともっと上手になって、Aを笑顔にしたい。」
創真の言葉を、彼の隣で静かに聞いていくA。
創「それにさ、おやじだってさ、
かーちゃんいなくなって悲しいに決まってるんだ。
それなのに、泣いてないんだ。
すげー強いな、って思った。
だから、俺も、泣いちゃダメだ。」
そう言う創真の顔は、必死に涙を堪えていた。
その痛々しい表情に、Aの方が泣いてしまった。
自分を守るために、こんなにも強くなろうとしている彼を思うと、自然と涙が溢れてきたのだった。
そんな彼に、Aが今できることはこれくらいしか思い付かなかった。
『見ないから。』
創「え？」
『わたし見ないから、それなら、泣いても、誰にも分からないでしょ？』
創「っ、っぅ」
『そーちゃんは、とっても強いよっ！』
そう言うとAは創真をぎゅっと抱き締めた。
温もりに包まれ、創真は大好きな彼女の前で初めて涙を流した。
『そーちゃん』
Aは、創真をぽんぽんと優しく撫でる。
『そーちゃん』
創真やAが悲しいとき、朱里はいつもこうやって抱き締めてくれた。
『大丈夫だよ』
大丈夫と頭を撫でてくれた。
『そーちゃん』
朱里はいつも優しく名前を呼んでくれた。
朱里はいつも、
彼のことを何と呼んでいただろう？
『．．創真』
この日から、Aは朱里のように創真を名前で呼ぶようになった。
そして、二人だけの静かな夜がふけていく。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 559人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
篠。(プロフ) - マタタ火さん» すみません、マタタ火様が指摘しているのはどちらのことか教えていただけますでしょうか？ (2020年1月6日 20時) (
レス) id: 77342cf851 (このIDを非表示/違反報告)
マタタ火 - その先って何ーー？ (2020年1月5日 12時) (レス) id: 917dfc6071 (このIDを非表示/違反報告)
篠。(プロフ) - †NANA†さん» ありがとうございます！訂正致しました！ (2019年3月29日 6時) (レス) id: 77342cf851 (このIDを非表示/違反報告)
†NANA†(プロフ) - ページ43で、「知っているよ」が「知ってるいよ」になっています。 (2019年3月28日 23時) (レス) id: e548a45679 (このIDを非表示/違反報告)
篠。(プロフ) - アリスさん» よろしくお願いいたします☆楽しみにしています(^q^) (2018年6月8日 18時) (レス) id: 77342cf851 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：篠 | 作成日時：2018年4月25日 20時
