キミとオレンジの世界【橙】 (ページ34)

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『ほら、見て？』

こちらに向けられた画面の中には、最優秀賞、優秀賞、佳作の作品が並んだその下に「審査員特別賞」とその横に「向井康二」の名前が確かに書かれている。

『ちゃんと、賞が獲れてるよ』

向「ほんまやね…」

『これは、何を撮った写真？』

審査員にとってなにが特別やったかはわからんけど、いいと思ってもらえたことが嬉しい。

俺がコンテストに提出したのは、あの日阿部ちゃんのシルエットが綺麗に伸びたあの写真で。なんだか、それを解説するのはむず痒いような気持ちになる。

向「これはな、待ち合わせ場所やねん」

『待ち合わせ場所？』

向「西陽の射す街、西の街、で俺の地元っていうトンチみたいなことやねんけど。

この人影がお花を大事そうに守ってるように見えるやろ？」

あの日、ちょうど阿部ちゃんが両腕を組んで上に伸びたとき、その腕の影が小さな名前も知らないオレンジの花を包んでいるように見えてシャッターを切ったんや。

向「こうやって離れても誰かに守られてるし、新しい街でも大切な人に出会うし、そういう人との繋がりを大事にしたいな、って」

『やっぱり、康二くんの写真は素敵だね』

自分のことのように喜んでくれるAちゃんも、写真を撮らせてくれた阿部ちゃんも、もちろん他のみんなも、どうやらこんなに短期間でこんなにも大切な人になったらしい。

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