ひとつのうた (ページ6)

今日:10 hit、昨日:11 hit、合計:30,540 hit

Story06 ページ6

.

海斗が来なくなってからは抜け殻のようだった。

その時初めて、私が海斗に救われてたんだって知った。

私がギターを始めたきっかけは

事故で亡くなった、二つ上のお兄ちゃんだ。

私の使っているアコギは、小さい頃からギターが大好きだったお兄ちゃんの形見。

そのギターで歌を歌い始めた。

"Aちゃん選ぶ曲は、深みがあって好き"

海斗はそういったけど

ただ、ひきずっていただけなのかもしれない。

あれから２年、海斗が現れることはなかったけど

私にはここでギターを弾くこと以外になにもなかった。

適当に就活も終わらせて、

あと3ヶ月で卒業。

そんな時だった。

？「以前から拝見させていただいていました。

本気で、歌、やってみませんか？」

『…お断りします。』

この人が怪しい人でもそうじゃなくてもいい。

だって私は普通の人だから。

高校、大学に行って、普通に就職する。

なんとなく友達と遊んでギターを弾く。

そして海斗とのあの夏の思い出

それだけで十分。