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( side A
さっきの勢いは何だったの、
と思わず叫んでしまいたくなるほど、
個室のご飯屋さんに入ってから川北は静かだった
動揺を隠すようにお冷に口をつけた
引っ張られていた時川北はずっと前を向いていたから表情を見れなかった
今は何も無かったかのようにメニューを見つめている顔が目の前にあって、
あれ、さっきの何だったんだってまた同じ考えが頭に浮かぶ
「A決まったの？」
『え、あ、私これ食べたい』
「ん、すいませーん」
手際よく注文をしてくれる、いつもの川北だ
まぁそっちがその気なら、あれはただの気まぐれだったと受け止めるしかあるまい、
とにかく家に帰るまでは
「Aってさぁ、」
『え、うん』
「ガクのこと、好きなの？」
『へ、は、？いやいやいや、ないでしょ』
「…本気でねぇの？」
『ないないない、ありえないよ』
「…ならいいんだけど」
通常モードかと思いきや、いきなりぶっ込んだ質問にまた動揺してしまう
ありえないって普通にわかるだろと思うが、
正面の川北はまだ納得いってなさそうな顔をしている
『なんで、そう思ったわけ？』
「いや、お前俺には冷たかったくせに、ガクとは楽しそうに話してたじゃん」
『あー……』
「普通にイラッときたけど、逆にそういうことなんかなって」
『いや、ガクはない。けど、なんか川北にだけ何故か態度変わっちゃうんだよね最近…本当にそこは申し訳ないと思ってる』
「俺だけ？」
『うん、なんか売れた同期への接し方がわかんないからかなって思ってたんだけど、ガクは大丈夫だったし、なんか川北だけダメになるみたい』
「…俺だけってそれいい意味？悪い意味？」
『えっ、わかんない』
「わかんないってなんだよ」
そう言ってどこかスッキリしたような笑顔を浮かべた
間近で素の笑顔を見るのが久しぶりな気がして、つられて私も笑った
「…それ、」
『うん？』
「その顔、俺の前でもしてよ」
『ふふ、そだね、そうする』
「…というか、俺の前だけで笑っとけばいいんだよ、Aは」
ぼそっと呟かれたその言葉に動揺する
ハッと顔を見てももう何も無かったようにご飯を食べている
慌てて箸をとって食べ始めたけれど、
さっきの言葉ばかり浮かんで、味がしなかった
…
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作者名：そら | 作成日時：2021年4月28日 21時
