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( side A
『あれ？ガクだ』
「えっ、うん、Aおつかれ」
『おつかれー、川北は？』
「…川北？わかんない、誰かに捕まってるかな？」
先に終わってたから、少し急いだのに…
連絡する程でもない気がして、この手持ち無沙汰な時間をどうしようかと思ったら、
ガクも貫ちゃんを待っているようで、少し話した
「最近ほんと戸惑ってばっかり、楽屋挨拶もなれないしさ」
『ふふ、川北の解説ばっかりだもんね』
「そうなんだよ、僕もう絶対おかしくなる」
『大丈夫、ずっと前から変だから』
「ちょ、Aまでそんな事言わないでよ」
『ごめんごめん』
会話は盛り上がって、
最近いられていない分、ライブ界隈のゴシップなんかも提供したりして、
ふと、あれ、ガクだと大丈夫だなって気づく
さっき川北と話した時に感じた不安とか焦りとかは、綺麗さっぱりなく話せていて、
これはガクのおかげなのか
はたまた川北にだけだめなのか
「あ、そういえば小道具」
『小道具？』
「前、僕んちにあるの貸してほしいって言ってたやつ」
『あー……なんかお願いした覚えあるわ』
「今度取りに来なよ」
『あ、持ってきてはくれないスタンツね』
「ほかにも余ってるのあるから、見て決めたらどうかなって」
『ん〜…次の新ネタライブでやろうと思ってたから行かせてもらおうかなぁ』
「じゃあ来れる日教えて」
『うん、家ちょっとは綺麗にしといてね』
「…あ、てか、今日で良くない？」
『あー今日は厳しいかな…』
そう言うと、さっきまで普通にしていたガクの表情が急に変わった
何その顔、急にオドオドしちゃって笑っちゃう
ガクの慌てる姿、面白いんだよな
『どうしたの、オバケでもいた？』
少し笑いながら振り返ると、細長いシルエットがすぐ近くにあった
「悪い、待たせた。行こ」
『…へ？』
川北だ、
と思ったのもつかの間、私の手を掴んでぐんぐん進んでいく
『あ、また後で連絡する！』
「あ、えっ、うん、おつかれ！」
ガクの姿がどんどん小さくなる
貫ちゃんもいつの間にかガクの隣にいて、
不思議そうな顔を浮かべているのが見える
掴まれた手首は痛くもないけど、決して離される雰囲気もなく、私たちはそのまま劇場を遠ざかっていった
…
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作者名：そら | 作成日時：2021年4月28日 21時
