煙に巻かれて【短編集】 (ページ4)

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意識してしまえば yuzuru.k ページ4

( side A

付き合いたい芸人は誰ですか？

異性としてみてしまう芸人は誰ですか？

この質問は女芸人には付き物だ

重々わかっているが、あまりにも多いとさすがに面倒くさくなってくる

そもそも基本的に同業者をそんな目で見てへんし

そこでいつからか、アンケートのタイプの芸人の欄に"河井ゆずるさん"と書く癖がついてしまった

安牌。

この言葉に尽きてしまうけれど、世間に認められるかっこよさやし、先輩やし、なんとなく書きやすいという理由でペンを走らせている

多少の罪悪感も感じるけれど、まぁ私みたいな若手の雑誌のインタビューや番組なんて見ないだろう

本当のところは、顔は確かにイケメンだと思うけれど、特にこれといって接点もなく、マンゲキで顔を合わせて、大勢の飲み会で一緒になるくらい

あぁ、でもいつも顔を合わせれば、こんな距離感の後輩なのにAちゃん、と笑顔で呼んでくれるな…

そういえば、前の飲み会は酔っ払ったリリーさんに絡まれたのを助けてもらったっけ……

やっぱ女慣れしてる人はそういうん上手いよなぁ、

「え、Aの好きなタイプってゆず兄なん！？」

リリーさんの大きい声で近くにいた芸人たちの視線が一気にこっちへ向いたのを感じた。

『ちょ、声でかいし、勝手に見んといてくださいよ』

「Aのタイプゆず兄やって初めて知ったんやけど？」

『いや、リリーさんに言わへんでしょ』

「え、どのへんが好きなん？」

『いや、好きとかちゃいますって、ただのアンケートやし…』

「でも今顔赤いで？」

『っちょ、ほんまにちゃいますから！』

「え、なにそれ可愛い、ゆず兄の前でそんな顔せんといてや」

『はぁ？何言うてるんですか、』

「いやぁ、恋する乙女はちゃうなぁ」

『だから！ちゃいますって！』

「おっ、なんや盛り上がってんな～Aちゃんがそないおっきい声出してんの珍しいやん」

言い合う私たちの後ろから歩いてきたのは、議題に上がっている張本人の、ゆずるさんだった