煙に巻かれて【短編集】 (ページ30)

今日:48 hit、昨日:14 hit、合計:94,739 hit

. ページ30

( side A

「というか1個思っちゃったんですけど、来るまで僕の話してくれてました？」

『え、いや、なんで？』

「川北さんの話飽きたって僕に言ってたと思ってたんですけど、Aさんも言われたって思ってたぽいので…あとは、僕の願望です、そうだったらいいなって」

『そうだったらいいな？』

「はい、僕はAさんが好きなので、そうだったらいいな、ですね」

『……くるま、もしかしてすごいこと言ってる？』

「この際仕方ないかなって」

『そんなさらっと言う？』

だめでしたか？

と問いながら覗き込んでくる顔を見たら
余計恥ずかしくなって
でも、やっぱり嬉しくて

『本当は今日私がくるまをご飯に誘おうと思ってた』

「え？」

『くるまのこと気になってたから』

「……変なボケじゃないすよね」

『真剣だったら付き合ってくれる…？』

「あたりまえじゃないですか！」

予定外が多すぎて、
鼓動がどんどん早くなるのがわかる
真っ直ぐな目で見つめられたら、
この人が好きだってまた実感してしまう

『……じゃあ、改めてなんか食べよ。こんなお店で申し訳ないけど』

「Aさん、照れ方可愛すぎません？」

『…本当はイタリアンに連れてく予定だったんだよ？』

「次行きましょう、絶対」

隣に座り直したくるまとメニューを分けっこして見ながら、さっきのお人好しを思い出す
なんにも言ってくれなかったけど
背中を少しだけとん、と押してくれた
やっぱり最後まで、優しい

「Aさん、？」

『川北にお礼言わなきゃね』

「次のライブ前二人で行きましょうよ」

『んー嫌がりそうだけど、行っちゃうか！』

「はい！」

…