煙に巻かれて【短編集】 (ページ28)

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お人好しの天使 kuruma.t (kawakita.s) ページ28

( side A

今日こそは、絶対に誘うって決めてた

場所は最近気になってた、
ちょっといい感じのイタリアン

話して、食べて、
あわよくばストーリーに可愛いgifつきで載せてくれたらいいな、なんて考えていたのに

「なんで俺とこんなとこいるわけ？」

場所は、人でいっぱいの大衆居酒屋

目の前には、お笑いサークル時代からの付き合いの髭面

まるで真逆

『ほんとごめんって川北』

「今日こそは、髙比良誘うって意気込んでたじゃん」

『だってさ〜〜〜』

「だってなんだよ」

『…ライブ終わり誘おうと思ってたのに、ずっとくるまの近くにカナメさんいたんだもん。言い方次第ではいじられて、変な感じになってた』

「それはそうかもだけど、LINEとかあんだろ」

『1回も行ったことないんだから、急に送ったらきもいじゃん』

「飯くらいあるじゃん」

『ふたりはないよ』

「はは、Aは髙比良のことになると、細けぇな」

『うるさい』

髙比良くるま
変な芸名、だけどお笑いに真っ直ぐで熱い

同じお笑いサークル出身で縁もあり、
出るライブが重なることが増えた

どんどんでてくるボケ、芸歴と反比例の実力とMC力
気遣いができて、優しい
ふわふわの髪もやたらでっかい声も
気付けばどんどん好きなところになっていた

でも今の環境を荒らしたくないし、関係性を変えたくなくてひっそりと押し潰そうと思っていたのに、気持ち悪いくらいの勘の鋭さを発揮されてばれた
それ以来、ぽろぽろと思いを川北に話してしまって、気がついたら前よりもっと意識するようになっていた

こうなったのも全部全部
恋愛話なんて無縁そうなのに、
何故か気にかけてくれるお人好しのせい

『待って、そういえば予定あったんじゃなかったっけ？』

「俺？あるよ」

『え、だめじゃん。なんでいんの』

「川北さん、Aさん、お疲れ様です」

『…くるま！？』

「じゃ、俺予定あるから」

『え、待って待って』

「かすやと会う約束してんのよ」

『じゃ、じゃあ肥満も連れてきてよ』

「お前の話聞くの飽きちゃったから。じゃ、まーごめ」

…