覚えていないで kento.y ページ15
( side 健人
一日のスケジュールを終えてやっとの思いで自分のベットに飛び込んだというのに、酔っ払ったAからの通知が目に入った
もう寝ててもおかしくない時間やからな、
と携帯を睨みつけ無視を決め込んだのに
本当は気づいてるでしょ、と言われてるみたいに電話は鳴り止まなかった
とうとう折れて居酒屋に駆けつけると、頬も目も赤らめヘラヘラ笑いながら知らない男に介抱されているAがそこにいた
"おっ、王子様の登場や"
"こりゃ長い夜になるでー"
周りの茶化しも無視してすぐさま歩み寄ると、こっちに気づいてわかりやすく嬉しそうに笑った
「何やってんねん」
『わぁ、けんと〜』
怒りを露わにして言ったというのに、上手く回らない呂律で猫のように擦り寄ってくるAは相当バカだ
そんな姿に安心している俺もバカ
帰るぞ、と腕を引っ張り立ち上がらせると、さっきAを介抱していた男に止められた
《お前はAのなんなの？》
知らない顔だから大阪の芸人では無いんだろう
狼のように鋭い目つきで俺を睨み上げる
なるほど、こいつはこのバカに惚れてるわけか
だったら、お前はAよりもバカだ
「彼氏だよ」
面倒はこれ以上御免だったからそう言って睨み返し、冷やかすような野次が飛ぶ中、さっさとAを連れて出口に向かって歩き出した
振り向きざまにあの男の哀しさと苛立ちが混じった顔が見えて、なんだか勝ち誇った気持ちになって、笑みがこぼれた
…
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作者名：そら | 作成日時：2021年4月28日 21時
