122話 ページ23
聖side
「……だよ」
小さく呟いた言葉に睨みを利かせてきながら「あ？」と返してくる。
「君に、僕の苦しみの何がわかるって言うんだよっ！！！！」
自分の中で抑え込んでいた感情を吐き出すように声を荒げ、怒り任せに岳斗君の事を両手で突き放す。
「確かにセシルとのことはもう終わった事だ。でも、その前にも僕は色んな過ちをしてしまってる。その過ちのせいで、僕の生活は無茶苦茶になったんだ！！！ 君は最弱である僕よりも強い、強いからこそ、弱者の気持ちなんて分かりっこないんだよ！！！ ペラペラと勝手なことばっか言うなっ！！！！」
こんな事、ホントは僕だって言いたくない。岳斗君達と居るのは楽しいし、笑顔でいれる。
でも、だからこそ、心の奥底で君を嫌ってしまう。みんなを嫌ってしまう。
ずっと何処かでみんなの事を憎んでて、そして何より、自分とみんなを比べてしまう僕の事が一番嫌いだ。
「っ…この野郎…！！」
突き飛ばされた事で完全にカチンと来たのか、さっきよりも激昂した様子で僕に近づき、胸倉を掴む。
「いい加減にしろよこのビビリ野郎！！！ ごちゃごちゃとうるせぇんだよ！！ 弱者とか強者とか、そんなもんどうだっていいだろうが！！！」
「いいわけないだろっ！！！ もうブレイダーになって3年は経つのに、未だオーバーレイヴンも使いこなせないし、弱い魔隆を倒すのにだって一番手間取ってしまう！！ いつまで経っても最弱から抜け出せない、入ったばかりの新米ブレイダーにも負ける、そのせいで除け者扱いされる！！！ これがどれ程の屈辱か、どれ程の苦痛か、君にわかるってのかよっ！！」
僕よりも優れているとわかっているからこそ、僕の中での憤りが大きくなってしまう。
勝手なのは承知の上だ。
でも、それでも……
──どうしても、君と僕を比べてしまうんだ。
溜まっていた鬱憤を吐き出す様に慣れない怒声を上げると、止まらない感情を落ち着ける様に肩で息をしながらも呼吸を整え心を鎮めていく。
「……悪いけど、やっぱり僕はチームを抜けるよ。僕みたいな足手纏いがチームに居たら、誰かが犠牲になってしまうから」
これ以上表情が読まれない様に顔を伏せ、気まずい空気を堪え兼ねながらも岳斗君の横を通り過ぎ、出口へと向かう。
「おい待て、話はまだ終わっちゃ───」
岳斗君が僕の腕を掴もうとした瞬間───
───大きな地響きと共に、鼓膜を突き抜ける様な爆発音がフロア内に響き渡った。
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