116話 ページ17
岳斗side
「お待たせー！ いやー少し時間かかっちゃった」
聖達と他愛も無い話をしながら待っていると、向こう側から買い物袋を沢山持った真冬と、恥ずかしそうに顔を俯かせているの肩を出した白いワンピの少女が向かってきていた。
「おっせぇよ真冬、服選びでそんな時間かける奴があるかよ」
「はぁ！？ ほんっとお兄ちゃんって乙女心を何一つ分かってないよね！ 女の子って言うのはいつだって可愛くありたいものなの！！ なにより、コーディネートは時間かけて選んだ方が断然良いの！！」
「あーそうですか、生憎男なもんだからそういう女の醍醐味とかよくわかんねぇんだよ」
「こんのっ……！！」
兄妹喧嘩が巻き起こりそうなとこを貴史が間に入り必死に収めようと俺達を宥めるが、それでも収まらず互いに不平不満や暴言を吐き散らしていく。
そんな状況の中、ワンピの少女がクイクイッと聖の服の裾を引っ張る。
「あ、あの……聖……」
聞き慣れたか細い小さな声、その声は紛れもなくセシルのものだった。
「えっ……もしかして、セシル？」
聖がそう聞くと、セシルは顔を頷かせた。
「なんだ、そうだったんだね。いつもと違う雰囲気だったから誰だかわからなかったよ」
「そ、その……どうかな。あんまり自信ないんだけど……似合ってる、かな……？」
「あ、うん、すごく似合ってるよ……その……見間違えるくらい可愛いよ……」
恥ずかしそうに2人は顔を真っ赤にしながら赤面なのがバレないように俯く。
その様子を側から見るとただの初デートに来たピュアなカップルにしか見えなかった。
「真冬、あれが本当の美少女って奴だぜ。お前みたいなガキセンスとは違う」
「はぁ！？ 」
「その証拠に見てみろよ、聖の奴顔真っ赤じゃねぇか。可哀想になー、ガキ体型なお前には無い魅力だ____」
瞬間、俺の体は妙な浮遊感に襲われる。
視界の先には眩く輝く楕円型のLEDライトが写り、腹部には何かに締め付けられるような感触があった。
突然のことで一瞬思考が停止するが、背後からの殺意を感じ取ったことで、俺の身に何が起きたのかが直ぐにわかった。
だが、もう気付いた頃には俺の頭は床に激突しており、「ドゴッ」という鈍い音が響くと同時に脳天に激痛が走った。
「ぐはっ……！」
バタッとその場に倒れると、真冬は俺を見下しながら「死ねっ！」の一言を残して俺から離れていった。
「クッソ……あいつがゴリラなのすっかり忘れてた……」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
