82話 ページ33
岳斗side
「……聖が望むなら……私は良いよ……」
背後を振り向くと、セシルと永也はダメージを負いながらも、なんとか立とうとしていた。
「聖がそれで……生きてくれるなら……私は喜んで……犠牲になるよ。あの時……聖が私を……助けてくれたみたいに……今度は……私が聖を……助けるね……」
「僕も……みんなを助けられるなら……それで良い……邪魔ものになるぐらいなら……置いていってくれて構わない。短い間だったけど……楽しかったよ……みんな」
永也もセシルも笑顔を浮かべてそう言う。
だが、俺にはその笑顔も、その言葉にも、悲しみが含まれているように感じた。
このまま置いていくのか? あいつらを助けずに、何もせずに行くって言うのか?
きっと、永也もセシルも生きたいはずだ。それを俺は何も出来ずに、拒むしかないのか?
「っ……ごめん、セシル……」
「やだよ……そんなのやだよ……永也君……!! 」
「……行くぞ、もうあいつらの方を見ずに____」
「見捨てないのだ」
疾風の言葉を遮ってそう言ったのは、自分の胸を掴んで顔を俯かせてるソラだった。
「ソラ……? 」
「ソラは見捨てないのだ……ソラは、何もせずにいるのは嫌なのだ!! 」
ソラは疾風達とは逆の方向に走り出し、2人の元へと向かう。
「! ソラちゃん!? 」
「危ないでござる!! ソラ!!! 」
「あんた何やってんのよ!! 早く戻ってきなさい!!! 」
制止を掛ける言葉すらソラは振り切って、2人の服の首根っこを掴んでゆっくりと引きずっていた。
「助けるのだ……絶対に……!! 」
「ソラ……ちゃん……? 」
「逃げてソラ……僕達はいいから……! 」
「よくないのだ!! ソラは2人を見捨てたくないのだ!! おとりとか、せんりゃくてきてったいとか、ソラには難しい事がわからないけど____」
一生懸命助けようとしているソラの両目から、ポロポロと涙が落ちる。
「死んじゃだめなのだ……! ソラの仲間なら、生きて欲しいのだ……!! 」
「ソラ……」
俺はソラの泣いている姿を見て、あの時見た家族の無残な姿と瀕死状態になっていたソラの姿を思い出した。
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