9-1:黒いマフラー ページ40
ジャスティンとニックが襲われたことで、生徒達の恐怖はピークに達した。
クリスマス休暇に帰宅しようという生徒がこれでもかと増えて、ホグワーツ特急の予約名簿はみるみる埋まっていった。
「おい」
魔法薬の授業終わり。
生徒達の波に従って歩く真緒の肩を誰かが掴んだ。
「なあに？」
「この間はよくも本の片付けをさせてくれたな」
眉間にシワを寄せたドラコだ。
真緒は校内でも一際冷え込む地下から早く移動したくて怪訝な顔になる。
「それはーードラコが髪を引っ張ったから」
「君が無視しようとしたからだろ」
「だって忙しかったんだもん」
「その割に何もせずに図書館から帰ってようだけどね」
ふんっと鼻を鳴らすドラコを睨む。
「何れにせよ怪物探しや人を操る方法だとか物騒な調べ物は感心しないな」
「勝手に本の中身見ないでよ」
「いいか？君が置き去りにした本を代わりに片付けてやったんだぞ」
真緒はむすっとした顔で頷いた。
(置き去りにする原因を作ったのはドラコだけど…)
「じゃあドラコは何か知らないの？継承者とか怪物のこと」
真緒が聞くと、ドラコは馬鹿にしたように笑った。
「ポッターが継承者だと言う奴は多いがーー僕に言わせりゃ馬鹿らしい、あいつの周りにいる人間を一目見たら継承者じゃないことくらいトロールでもわかるだろうね」
「ドラコなの？」
「僕？まさか。ま、継承者が誰かわかったら手伝ってやっても良いけどーーー」
(また酷いことを言う…)
真緒があからさまに顔をしかめたのを見て、ドラコは言葉を切った。
「兎に角、余計な調べ物なんてする必要はない、継承者の敵だと思われるだろ」
「けど、ジニーがーー」
「ウィーズリーのチビも純血だ」
真緒の言葉をぴしゃりと遮ったドラコは「君もホグワーツに残るのかい？」と続けた。
真緒が頷くと、ドラコはさして興味もなさそうに「ふーん」と言った。
そして、寒そうに首を縮こまる真緒の剥き出しの首筋にちらりと視線をやった。
「相変わらずいつ見ても寒そうだな。君はマフラーも持っていないのかい？」
「え？」
真緒は思わず周りの生徒を観察した。
確かにドラコの言う通り、マフラーや手袋をしている生徒が大勢いた。
(何で今まで気づかなかったのだろうか…)
校内で防寒具をつける習慣のなかった真緒は、今の今まで全く気づかなかった。
気づくとより寒さを感じて、思わずぶるりと震える。
(今までのカイロの努力…)
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作者名：M.S | 作成日時：2019年10月13日 11時
