TraumⅢ【短編集】 (ページ41)

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*ウツシエとアナタの話

「A」

「A！」

「A〜！！」

出会った日のあのたどたどしさはどこへやら。ニコニコ顔で駆け寄ってくるリンクは、まるで犬のよう。

「A！今日はハテノ村に行ってきたんだ」
「へぇ。どうだった？」
「見てて」

リンクはシーカーストーンを取り出し、何かを行う。
暫くして彼は画面をこちらに向ける。

「綺麗でしょ」
「⋯⋯これ、は」
「ウツシエって言うんだって。こうやってね」

シーカーストーンをそばに居たコッコに向けて、カチャリ。
⋯⋯どう見てもカメラ、いや、スマホの方が正しいか⋯⋯？

「凄くない！？」
「うん。凄いねぇ」
「でしょう！他にも色々撮ってきたんだ！」

そうして見せられたウツシエ(写真)は、遠くに見える燃える山、はしゃぐ村の子どもたち、木の上で安からに眠るリス、馬に乗って暴れるボコブリンなどなど⋯⋯

「いっぱい撮ってきたんだねぇ」
「Aに見てもらいたかったんだ」

出来ることなら実際に見て欲しいんだけど⋯⋯と続けるリンクに苦笑いをこぼす。
私は彼みたいに鍛えてないただの一般人だ。ボコブリンに襲われればひとたまりもない。正直、今こうやって生きているのが奇跡なくらいだ。

「その気持ちだけで十分嬉しいよ。ありがとう、リンク」
「⋯⋯！うん！」

にへへと笑う彼に、何かがぎゅぅとなる。
不快な感情では無い。けど、これは、何？