TraumⅢ【短編集】 (ページ40)

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*その一瞬で惹かれてしまったのだ

僕はこれからどうするべきなんだろう。何も知らない、わからない。けどやらなければいけないと、誰かが強く訴えてくる。
わけもわからないまま武器を取り、言われるままに戦い、祠の攻略をし、ゼルダ姫を助けてくれという言葉と共にパラセールを託された。
⋯⋯たしかに、ゼルダ姫は、助けたい。だって、あんなとこに何十年もひとりぼっちなんて、可哀想じゃないか。
けれど、僕があの化け物を倒せるなんてまったく思えない。

インパさんも、老人──えっと、王様？だったんだっけ──も、僕を信頼しすぎじゃないだろうか。英傑でも勇者でもない僕にとって、あのガノンとかいう化け物を倒すのは無理だって思ってしまう。いくらかつてすごい人だったとしても、その記憶がなければただの子どなんだよ。
つまり、ぼくは、この戦いから⋯⋯

「ねぇ」

ふと声をかけられて顔を上げた。そこにいたのは女の子で、彼女は僕と目が合うと嬉しそうな顔をする。

「きみがリンク？」
「う、うん」
「よかったぁ！インパさまとのお話はもう終わった？」

頷けば、彼女は僕の手を握った。
ちいさくて柔らかい子どもの手。

「すこしお話しようよ！」
「えっ！？き、きみは⋯⋯」
「私はA！よろしくね、リンク！」

自分に向けられたその笑顔がどうしようもなく愛おしく感じて、胸の奥が締め付けられる。

──ガノンが復活したらこの村も、彼女も、なくなっちゃうんだよね。

とても単純で、馬鹿だと言われるだろう。けれども今の僕にとって、今を生きるちいさな彼女の存在は『戦う理由』として大きすぎたのだ。

「うん。よろしくね」

Aの笑顔と、平和を守るために、今は頑張ろう。いつかガノンドロフも倒して、ゼルダ姫も取り戻して、彼女に本当の平和をあげよう。この気持ちに名前をつけるのは、それからでも遅くないなずだから。