TraumⅢ【短編集】 (ページ36)

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いちねんの、/星カビ組ページ36

※男主

ぱくり。
こたつの机の上に溜まっていくみかんの皮、中身が空っぽになったかご、ぱくぱくと食べ続けているピンクだま。

「僕もみかん食べたい。だいおー取ってきて」
「自分で行けばいいだろ」
「やだぁ〜⋯⋯ねーねー、おねが〜い。とってきてよ〜」
「⋯⋯しゃーねーなぁ」

だいおー、結構身内には甘いところあるよね。そう思った時、ことりとお皿が置かれる。
乗っているのは8等分にされたりんご。ご丁寧に皮まで向いてある。

「りんごなら剥いてありますよ！」
「バンワドくん優秀～ありがとう」
「おっ！サンキューな！」

おいでおいでと隣にバンダナワドルディくんを座らせ、再びこたつに潜り込む。
剥いてくれたし、とひとつりんごを手に取って食べる。う〜ん！おいしい！！

「メタナイトは？」
「さぁな。仕事があるって言ってたぞ」
「へー」

しゃくしゃくと音を立てつつ食べ進める。
どこのリンゴだろ？うち(プププランド)のじゃ無さそうだけど。

「あー！」
「何！？みかん無くなった！？」
「ちがう！てれび！」

突然大声をあげたカービィ。なんだとテレビに目を向ければ、そこにはマルスやアイクと共に神社で年越しを待つ姿が小さく映っていた。
⋯⋯知人をテレビ放送で見つけた時の気持ち、こんなんなんだ。

「よく見つけたな⋯⋯」
「さむそー！」
「マフラーしてかなかったんですね⋯⋯」
「あれ、バンワドくんは聞いてたの？」

たまたま鉢合わせたんだと返ってくる。せめて一言くらい言ってってくれたなら⋯⋯

「ねぇねぇ！今からとつげきしに行こうよ！」
「お前いま寒そうって言ってなかったか？」
「いったけど、それはそれ！これはこれ！ね！」
「うーん⋯⋯でも今からでは年越しに間に合いませんよ？」

⋯⋯たまには静かに年越ししたかったんだろうな。うん。
今にも家を飛び出さんとするとカービィと、それを窘めるだいとーとバンワドくんを見つめる。

「カービィ」
「はーい！どうしたの？」
「さん、に、いち⋯⋯」

鐘の音がテレビ越しに聞こえる。よーく耳をすませば、微かに窓の向こうからも聞こえる気が⋯⋯しなくもない。

「あ！はっぴーにゅーいやー！」
「あけましておめでと〜」
「おう、おめでとう」
「あけましておめでとうございます！」

──ことしもよろしくね！

言い方は違えど意味は同じな言葉がかぶり、僕たちは吹き出す。
今年も楽しい1年になるといいな。