TraumⅢ【短編集】 (ページ34)

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爪先に彩りを/マルスページ34

彼の指がくすぐったい。
そう思って足を引っ込めれば、こらと足首を掴まれた。

「服についちゃうよ」
「んんー⋯⋯そうだねぇ」

足首を掴んだまま彼は続ける。
さすがマルス。器用。

さらさらと不思議なほど滑らかにつま先が彩られていく。
ホワイトをメインにしてくれと頼んだため、シンプルなデザインになっている。

「あとは⋯⋯」

ぽつんと置かれていたコバルトブルーに手を伸ばす。

「青は好き？」
「好きだけど⋯⋯」
「ならよかった」

左足の小指に、コバルトブルーが塗られる。
丁寧に綺麗に色は広がって、おちた。

あとはちゃちゃっと仕上げをして。

「乾くまでじっとしててね」

一際目立つ小指のブルー。
なんで色を変えたのだろう⋯⋯ま、いっか。マルスみたいで綺麗だし。

(爪先の青は、彼の証)
(ほんの小さな独占欲の証だ)

＊＊＊

マルスにネイルをしてもらう話。