TraumⅢ【短編集】 (ページ20)

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星たちの遊び場/アイクページ20

「やぁアイクくん。こんばんは」

毎夜、俺の部屋のバルコニーに現れる人。
Aと名乗るそいつは、俺と目が合って顔を綻ばせた。

「今日もお疲れ様。試合はどうだった？」
「⋯⋯僅差で勝った」
「お！さすがアイクくん」

ぱちぱちと音を立てて拍手する。
彼女の手からはパチパチと音を立てながら小さな星が飛び散った。

「なぁ」
「あ、星零れてた！？ごめんね、つい」

Aには謎、というか不可解なことが多い。
今だってそうだ。

色んな人がこの世界には居るが、手を叩くことで星を作り出せる人は見たことがない。

「見て、双子座。そっくりじゃない？」

手のひらに並べた星屑を差し出される。
生憎星座には詳しくない、そう言えば彼女は空を指さして「あれだよ」と言う。

「あれが双子座、あっちが牡牛座、それでこっちは蟹座。向こうの星は⋯⋯」

夜空に浮かぶ沢山の光。
俺には見分けがつかないが、彼女ははっきりとわかるらしい。

「⋯⋯アイクくん、聞いてる？」
「あぁ」
「⋯⋯今日はもう寝ようか」

彼女は手のひらを下に向ける。
抱えていた星屑はふわふわと空中に浮き、俺の部屋を僅かに明るくさせた。

気がついたら俺は布団の上に寝ろこがっていて、Aは傍に座っている。

「おやすみなさい、いい夢を」

──次に目を開けた時には、すっかり太陽は登っていて、Aの姿も星も、どこにも見当たらなかった。

＊＊＊

お題メーカー様より『丑三つ時に遊ぶ星座』