45.避けての苦しさ ページ7
＊
理奈「は……遥……」
そう。海のようにキレイなショートヘアの女の子。私が小さい頃ずっと一緒にいた……遥。彼女も驚いた様子で私を見つめる。
冷や汗が出てきそうだ。今ものすごく怖い。
杏「あ……えーっと……遥、いらっしゃい！今日は何飲む？珈琲とか？」
事情を知っている杏は一瞬顔を強張らせていたが、すぐ彼女に笑顔を向けていた。
あの時のことが思い出される。……消えないと。
理奈「……杏、ごめん。私もう帰る」
杏「えっ、理奈！？」
突然の言葉に杏は驚いているが、私はそれに気付かないフリをしてカフェの出入り口に向かう。
でも……。
遥「待って、理奈！」
私が出て行こうと扉を開けるために伸ばした手を、遥に止められる。私の手首を強く掴んだ。
遥「理奈、お願い。話を……」
理奈「…………」
彼女が言い終わらないうちに、私は彼女を……彼女を……？
遥「……！」
私の顔を見て、息を呑む遥。紛れもない悲しみを浮かべた表情が見える。
私は弱くなった彼女の手から手首を抜き、急いでその場を立ち去る。
カフェの出入り口が完全に閉まる直後、杏が私の名前を呼んだ気がした。
でも、今の私には、その声は聞こえない。
＊＊＊
また逃げた。
また避けた。
また彼女を傷付けた。
何故なんだ。
何故遥はまだ私を覚えていたのだろうか。
何故遥は私を引き留めようとしたのだろうか。
いや、それはどうでもいい。それよりも、私は……。
理奈「なんで、遥に、あんな態度……」
涙が次から次へと零れ落ちていく。止めようにも止められない。
何故、私はこんなにも臆病なのだろうか。
何故私は彼女を傷付けることしか出来ないのだろうか。
何故私は彼女を思う度に、何度も彼女を悲しませるようなことをするんだ。
何故私は……彼女と向き合おうとしないのだろうか。
何も知らない様子の夕日は、弱々しい少女の影を伸ばしていった。その影は、とても寂しそうだった。
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ぽっカラ(プロフ) - ふゆさん» 読んでくださり、誠にありがとうございました！楽しんでもらえてとっても嬉しいです！まだまだ拙い文章しか作れませんが、よろしくお願いします！ (2022年1月4日 15時) (
レス) id: c1afce4da1 (このIDを非表示/違反報告)
ふゆ - コメント失礼します。ランキングから見つけて一気読みさせていただきました。透明感のある、きれいで良いお話でした。最終的にとても良いハッピーエンドを迎えられてよかったです。私もこんな繊細で美しい文章が書けるようになりたいです。ラストまで、お疲れ様でした! (2022年1月3日 23時) (レス) @page21 id: cbb6d6ebb3 (このIDを非表示/違反報告)
ぽっカラ(プロフ) - ツクヨミさん» 読んでくださり、誠にありがとうございました。 (2021年12月19日 19時) (レス) id: c1afce4da1 (このIDを非表示/違反報告)
ツクヨミ(プロフ) - いい話でした、お疲れ様でした (2021年12月19日 18時) (レス) @page21 id: 8fcd9949a5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぽっカラ | 作成日時：2021年6月20日 15時
