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10 ◆ ページ10

麻布祭りの帰り、屑に絡まれているAを助けた所から俺達の恋は始まった。

特別可愛いわけでも、綺麗なわけでもなかった。ただ何となく、放っておけなかった。


お礼と称して俺を外に連れ出したあいつに合わせて一日を過ごしているうちに、意識するようになった。

夜になる頃には、すっかりAに夢中になっていた。


それが、16歳の夏の出来事。

今まで誰にも興味がなくて、何にも執着しなかった俺が、生まれて初めて愛を感じた。


思い返せば喧嘩の一つもしたことがなかった。

喧嘩するほど何とやらと言うが、喧嘩しなくても充分に仲が良かったと自他共に認めている。

だから手を挙げた事なんて一度もないし、この先も絶対にないと言い切れる。


意識を手放させるには鳩尾に一発、そんなのはナンセンスだ。

即効性のある睡眠薬を顔面蒼白のAに摂取させた。

昨日の今日で恐らく眠れていないだろう、そう読んでのことだったが当たりらしい。

すぐに焦点が合わなくなり瞼が閉じていくAが可愛くて仕方なくて、あの頃よりも伸びた髪をゆっくりと撫でた。



「愛してる。」



その言葉に、嘘偽りはない。

人を愛するなんて、後にも先にもこいつしかいない。

12年の空白なんて簡単に埋めて、また2人で幸せだって笑い合いたい。



「竜胆ー、迎え来てー。」

「どこに?」

「位置情報送るわ。早くしろよー。」



すっかり眠りに落ちたAの頭をゆっくりと何度も撫でながら、唯一俺達の関係を知っている弟に電話を掛けた。

こんな朝早くに人遣いが荒い、どうせ電話を切った後そう愚痴を零しているに違いない。


朝から完璧にメイクをした綺麗な寝顔に口付けたくなる衝動に駆られるも、必死に抑え込む。

キスをするなら、Aの意識がある時にしたいから。


スーツが汚れるのも厭わず、狭い玄関に座り込む。

力が抜け切ったAを抱えて上に乗せ、心の隙間を埋めるように強く抱き締めた。

ずっと、こうしたかった。


なあ、お前はきっと、俺が別れたいと思って出て行ったと思っているんだろうな。

連絡も取れなくて、何日も帰って来なくて、不安で寂しくてどうにかなりそうだったんだろうな。


だから、いなくなったんだろうな。


待ち続けてくれてるって、甘えてた。

そうじゃないんだって、誤解を解きたい。


最後に抱き抱えた時よりも重くなったのは、大人になった証拠なのだと笑みを浮かべた。

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れん(プロフ) - まゆさん» まゆさま、コメントありがとうございます!お褒めの言葉、とても嬉しく思います!「一生幸せ」も読んでくださってありがとうございます☺️全然系統が違うのに一気読みしていただけて嬉しいです!これからも楽しんでいただけるよう頑張ります✨ (3月18日 19時) (レス) @page23 id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 初コメ失礼致します。お話が面白くメチャクチャ引き込まれてしまい、気づいたら一気に読んでしまいました!あと実は、れん様の他の蘭君のお話しも一気に読ませていただきました!どれも最高に良かったです!!更新頑張ってくださいね。応援しています。 (3月18日 8時) (レス) @page23 id: e4a4033c2e (このIDを非表示/違反報告)
れん(プロフ) - とわさん» とわさま、コメントありがとうございます!沢山の蘭くんの小説の中からこちらを見つけてくださって嬉しい限りです!貴重なお時間を使って読んでいただいている分、面白かったと思ってもらえるようなお話に出来るよう頑張ります☺️ (3月16日 1時) (レス) @page21 id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)
とわ - 蘭くんの小説探してたらみつけたんで読ませていただいてます!めっちゃいいっすね…まじ好きな感じできてて… これからも読ませていただきます!応援してます!頑張ってください! (3月15日 3時) (レス) @page21 id: 8407209a34 (このIDを非表示/違反報告)
れん(プロフ) - kizunaさん» kizunaさま、コメントありがとうございます!こちらのお話にも遊びに来てくださって本当に嬉しいです☺️更新頑張りますので、またお暇な時に読んでいただけたら幸いです…! (2月23日 21時) (レス) id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:れん | 作成日時:2024年2月23日 0時

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