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8 ◆ ページ8

「何の因果かねェ…。偶然っつーか、最早奇跡だな。」



朝の5時。暇を潰して来いと追い出され数時間が経過した後、再び九井の執務室へ足を運ぶ。

デスクの上に置かれた一枚の用紙とメイン基盤と呼ばれる部品。

持ち主の特定は終わったと告げる九井にご苦労様と感謝を伝え、情報が記録されているであろう紙切れを手にした。



「目撃者はどうするんだっけ…なァ?」

「…テメェ…これ本当だろうな。俺を揶揄って適当な事書いてんだったら…お前から殺すぜ?」



九井が調べ上げたスマホの持ち主の名前を見て、紙切れを持つ手が震えた。

カサカサと音を立てる俺に煩いと一瞥した九井が睨む。



「わざわざ時間割いてまでそんなくだらねェことするかよ。」



この男が馬鹿ではないことは十二分に理解している。

だからこそ、こいつに頼んだ。


その九井がノートパソコンをこちらに向ける。

画面には現場の裏路地から出た繁華街で、人の間を縫うように駆ける女の姿が流れている。

場所も時刻も一致しているのならこいつがそうなのだろう。


正面からの映像に切り替わった時、息が詰まったような錯覚に陥った。

もう、言い逃れは出来ない。

夢にまで見た、あの日から今日までずっと愛している女の姿だったのだから。

どんなに成長していても、絶対に本人だと断定出来る自信がある。


好きな女の顔を忘れる男なんて…いないだろう。



「俺の仕事はここまでだ。」

死体(スクラップ)にしろってか…?」

「俺はそんな事一言も言ってねえ。後始末に関しては俺の管轄外だ。」



ジッパーバッグに入れられた壊れたスマホと基盤を渡され、部屋を追い出される。

手に持ったままの一枚の紙にはAの個人情報がつらつらと並んでいた。


シャワーを浴びて、昔あいつが好きだと言っていた香水を纏う。

一人で歩く早朝の静かな街。今日も世界は新しい一日を迎えた。


馴染みのない住所へと歩く足取りは不思議と軽く感じる。

7時35分、チャイムを押す指は緊張から少しだけ震えた気がした。

解錠音に口角が上がり、ドアノブを捻る。


無防備で無警戒、そんな所も好きで好きで堪らなかった。

「可愛い」最愛の女は、12年と言う長い歳月を経て「綺麗」へと変貌を遂げていた。

12年振りに瞳に映した本物に心が歓喜するのを感じながら、あの頃よりも大人になったAの頬を撫でる。


今も燃え上がるように俺の全身全霊を満たす愛しき存在に、会いたかったと言葉を贈った。

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れん(プロフ) - まゆさん» まゆさま、コメントありがとうございます!お褒めの言葉、とても嬉しく思います!「一生幸せ」も読んでくださってありがとうございます☺️全然系統が違うのに一気読みしていただけて嬉しいです!これからも楽しんでいただけるよう頑張ります✨ (3月18日 19時) (レス) @page23 id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 初コメ失礼致します。お話が面白くメチャクチャ引き込まれてしまい、気づいたら一気に読んでしまいました!あと実は、れん様の他の蘭君のお話しも一気に読ませていただきました!どれも最高に良かったです!!更新頑張ってくださいね。応援しています。 (3月18日 8時) (レス) @page23 id: e4a4033c2e (このIDを非表示/違反報告)
れん(プロフ) - とわさん» とわさま、コメントありがとうございます!沢山の蘭くんの小説の中からこちらを見つけてくださって嬉しい限りです!貴重なお時間を使って読んでいただいている分、面白かったと思ってもらえるようなお話に出来るよう頑張ります☺️ (3月16日 1時) (レス) @page21 id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)
とわ - 蘭くんの小説探してたらみつけたんで読ませていただいてます!めっちゃいいっすね…まじ好きな感じできてて… これからも読ませていただきます!応援してます!頑張ってください! (3月15日 3時) (レス) @page21 id: 8407209a34 (このIDを非表示/違反報告)
れん(プロフ) - kizunaさん» kizunaさま、コメントありがとうございます!こちらのお話にも遊びに来てくださって本当に嬉しいです☺️更新頑張りますので、またお暇な時に読んでいただけたら幸いです…! (2月23日 21時) (レス) id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:れん | 作成日時:2024年2月23日 0時

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