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二人が初めて一緒に生活を共にしたあの部屋の住所は、12年経った今でも郵便番号から番地までちゃんと覚えている。
住んでいたのは期間にしたら1年くらいしかない。そこまで長くはないけれど、一緒に住んでいた特別感は充分にあった。
とは言っても、12年も経てば新しく開店した店や閉店した店、いつの間にか建てられていたマンションやアパートで周囲の景色は変わっていた。
それが何だか寂しく思えて、隣に視線を移せば同じようなことを考えていそうなAの表情があった。
「ここを曲がって、」
「二つ目の信号で左、でしょ？」
長い時を経て建物は変わっていても、道路自体は変わらない。
Aも覚えていてくれたことが嬉しくて、30キロ制限の狭い路地を飛ばしたら怒られてしまった。
人1人くらい轢いてもいいくらいの気持ちでいたが、これからは隣にAがいる。
極力騒ぎになるようなことは起こさないように気を付けなければいけないと、自分に言い聞かせるように小さく頷いた。
そろそろ見えるはずだと薄暗い路地をハイビームで照らせば、あの頃と何一つ変わっていない小さなアパートが浮かび上がった。
「あった…あったよ…！」
「だな。ちょっと降りるか。」
深夜の静まり返った住宅街に愛車の排気音はよく響く。路肩に駐車して車を降りれば冷たい夜風が俺達に纏わりついた。
寒空の下、お互い特に言葉は発さない。自然と繋いだ手をぎゅっと握り、12年前まで住んでいた部屋の窓を見つめた。
明かりはないが、ベランダには物干し竿が掛けられていた。
今は違う誰かが、俺達の思い出だった場所で新しい思い出を刻んでいる。それが嬉しくもあり、寂しくもあった。
「…今はどんな人が住んでるんだろうね。」
変な奴じゃないといいな。俺らみたいな、喧嘩の一つもしない仲の良い恋人達なら尚更。
ここはもう、違う誰かの帰る場所。
「見に来てよかった。」
心残りは何もないと、Aが呟く。風に乗って消えた言葉に頷いて、隣に立つAを引き寄せて抱き締めた。
これからは新しい部屋で、また思い出を重ねていきたい。
今度こそ、最後まで幸せにしてみせる。ずっと二人で笑い合って、幸せだと言える未来を作ってみせる。
「A、愛してる。」
胸の中で頷いた返事にまた愛おしさを感じながら、もう来ることのないこの場所へさよならを告げた。
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れん(プロフ) - まゆさん» まゆさま、コメントありがとうございます！お褒めの言葉、とても嬉しく思います！「一生幸せ」も読んでくださってありがとうございます☺️全然系統が違うのに一気読みしていただけて嬉しいです！これからも楽しんでいただけるよう頑張ります✨ (3月18日 19時) (
レス) @page23 id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 初コメ失礼致します。お話が面白くメチャクチャ引き込まれてしまい、気づいたら一気に読んでしまいました！あと実は、れん様の他の蘭君のお話しも一気に読ませていただきました！どれも最高に良かったです！！更新頑張ってくださいね。応援しています。 (3月18日 8時) (レス) @page23 id: e4a4033c2e (このIDを非表示/違反報告)
れん(プロフ) - とわさん» とわさま、コメントありがとうございます！沢山の蘭くんの小説の中からこちらを見つけてくださって嬉しい限りです！貴重なお時間を使って読んでいただいている分、面白かったと思ってもらえるようなお話に出来るよう頑張ります☺️ (3月16日 1時) (レス) @page21 id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)
とわ - 蘭くんの小説探してたらみつけたんで読ませていただいてます！めっちゃいいっすね…まじ好きな感じできてて… これからも読ませていただきます！応援してます！頑張ってください！ (3月15日 3時) (レス) @page21 id: 8407209a34 (このIDを非表示/違反報告)
れん(プロフ) - ｋｉｚｕｎａさん» ｋｉｚｕｎａさま、コメントありがとうございます！こちらのお話にも遊びに来てくださって本当に嬉しいです☺️更新頑張りますので、またお暇な時に読んでいただけたら幸いです…！ (2月23日 21時) (レス) id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：れん | 作成日時：2024年2月23日 0時
