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愛してる。

その五文字を簡単に口に出すことが出来る人間は山程いるけれど、その言葉に込められた本当の重みを知っている人間はどれくらいいるのだろうか。

誰にでも吐ける甘くて儚い幻の五文字と、この世界にたった一人しかいない誰よりも大切な人に贈る五文字は全くの別物だ。

その五文字を望んだ相手から貰えることは何よりも光栄で、誰よりも特別な証であることを実感出来る人間はどれくらいいるのだろうか。



「Aからの愛してる、やっと聞けた。」



望んでいたとは言え、無理矢理にでも聞きたかったわけじゃない。


勝手に部屋を解約して同じ部屋に住まわせることで物理的な距離はとても近くなった。いつだってすぐ隣にいられるようにした。

それでも、A心が離れていては何の意味もないことくらい理解していた。

そうあって欲しくはないと願い、何度も贈り続けた愛を捧げる言葉にいつかまた笑顔で振り向いて欲しかった。どれだけ時間が掛かろうとも待つつもりでいた。


泣きながら愛してると紡いだAが愛おしくて堪らなくて、本当の意味でもう一度俺の元へと帰ってきてくれた感謝で胸が一杯になるのを感じた。

体中を駆け巡る幸せと呼べる感情に、呼吸の仕方さえ忘れそうになる。



「意地張ってた…。言ったら戻れなくなる、でもまた一人になったらどうしようって…。」

「全部分かってる。俺が何年お前のこと愛してると思ってんの?」



俺はAのことなら誰よりも知っていると自負している。好きなことも嫌いなことも、本人でも気付かない小さな癖も何もかも。

ごめんね。長い睫毛を震わせながら何度も謝るAを抱き締めて、白い首筋に唇を寄せる。

ぴくりと体を揺らしたのは吐息がかかっているからか、濡れた舌が触れたからか、それとも両方か。


Aの匂いはとても甘美で、脳が蕩けてしまいそうな程に酔いしれる。

わざとらしく音を立てた後、強く吸い上げればAは小さく声を漏らした。キスマークなんて子供じみた独占欲の証をつけて、これで俺だけのAだと自己満足に浸る。



「蘭くんが好き。離れてからもずっと好きだった。蘭くんのことばかり考えてた。」

「俺だって、一日たりとも忘れた日はねえよ。」



悪い人になってもいいから、私を蘭くんの隣に置いて。

か細い声で震えながらそう言ったAにこの先は地獄だと苦笑すれば、一緒なら何だっていいと熱烈な告白が返ってきた。

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れん(プロフ) - まゆさん» まゆさま、コメントありがとうございます!お褒めの言葉、とても嬉しく思います!「一生幸せ」も読んでくださってありがとうございます☺️全然系統が違うのに一気読みしていただけて嬉しいです!これからも楽しんでいただけるよう頑張ります✨ (3月18日 19時) (レス) @page23 id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 初コメ失礼致します。お話が面白くメチャクチャ引き込まれてしまい、気づいたら一気に読んでしまいました!あと実は、れん様の他の蘭君のお話しも一気に読ませていただきました!どれも最高に良かったです!!更新頑張ってくださいね。応援しています。 (3月18日 8時) (レス) @page23 id: e4a4033c2e (このIDを非表示/違反報告)
れん(プロフ) - とわさん» とわさま、コメントありがとうございます!沢山の蘭くんの小説の中からこちらを見つけてくださって嬉しい限りです!貴重なお時間を使って読んでいただいている分、面白かったと思ってもらえるようなお話に出来るよう頑張ります☺️ (3月16日 1時) (レス) @page21 id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)
とわ - 蘭くんの小説探してたらみつけたんで読ませていただいてます!めっちゃいいっすね…まじ好きな感じできてて… これからも読ませていただきます!応援してます!頑張ってください! (3月15日 3時) (レス) @page21 id: 8407209a34 (このIDを非表示/違反報告)
れん(プロフ) - kizunaさん» kizunaさま、コメントありがとうございます!こちらのお話にも遊びに来てくださって本当に嬉しいです☺️更新頑張りますので、またお暇な時に読んでいただけたら幸いです…! (2月23日 21時) (レス) id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:れん | 作成日時:2024年2月23日 0時

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