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警察が私を捜している。

何かが弾けたように関連記事を次々と読み漁り、小さな画面の中に並ぶ文字に取り憑かれていた。


安心したかった。

私が犯人だと疑われていない、蘭くんが犯人だと断定されていないという証明が欲しかった。

どの記事にも梵天の文字が何度も出てきたけれど、蘭くんの名前はなかった。あと、私の名前も。


大丈夫。きっと、蘭くんが何とかしてくれる。

馬鹿なことを言っている自覚はある。この思考が可笑しいことくらい、自分が一番よく分かっている。

それでも、蘭くんに縋って生きていくしか道は残されていない。

また逃げて、一人になって。一生後悔しながら生きていくくらいなら、許される限り蘭くんと一緒に過ごせる日々を選びたい。


ふと、画面の左上に表示された時刻が目に付いた。

昨夜の光景がフラッシュバックする。瞬間、いろんなものが込み上げてきて視界がぐにゃりと歪んだ。


慌てて席を立ってトイレへと駆け込む。全て吐き出してしまえば楽になれる、頭の中で何度もそう言い聞かせて涙を流した。

そんな時、ドアの向こうで私を呼ぶ声がする。

このタイミングで蘭くんが帰ってきてしまったのだと気付き、身動きを止めて声を押し殺す。

一度は通り過ぎた足音が再び慌ただしく戻ってくる。平然を装ってトイレのドアをゆっくり開けた。



「A、…あー良かった…どっか行っちまったのかと思った…。」



眉を下げて小さく笑った蘭くんが壁に凭れ掛かり、大きく息を吐いた。

ごめんねと蘭くんの手を取った。こんな夜だと言うのにやけに温かくて、それが妙に心地良くて安心する。大丈夫だと言ってくれているみたいで。

そんな私とは対照的に、怪訝そうな表情を浮かべる蘭くんがじっと私の瞳を見つめる。



「手冷たすぎねえ?」

「そう?普通だよ。」



蘭くんは鋭い。私の心なんて簡単に見透かしてしまうから、これ以上追求されないようにリビングへ戻ろうと手を離した。



「何かあった?」

「何でそう思うの?何もないよ。」

「A、気付いてる?嘘吐く時はいつもそうやって、何でそう思うのって前置きすんの。」



昔もそうだった。そう話す蘭くんの瞳から逃げられず、視線を逸らせないまま静寂が流れる。

私自身にそんな癖があるなんて、言われるまで気付かなかった。蘭くんは私のことをよく分かっている、怖いくらいに分かりすぎている。



「…ちょっと話しような。」



再び手を繋がれ、リビングへと連れて行かれた。

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れん(プロフ) - まゆさん» まゆさま、コメントありがとうございます!お褒めの言葉、とても嬉しく思います!「一生幸せ」も読んでくださってありがとうございます☺️全然系統が違うのに一気読みしていただけて嬉しいです!これからも楽しんでいただけるよう頑張ります✨ (3月18日 19時) (レス) @page23 id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 初コメ失礼致します。お話が面白くメチャクチャ引き込まれてしまい、気づいたら一気に読んでしまいました!あと実は、れん様の他の蘭君のお話しも一気に読ませていただきました!どれも最高に良かったです!!更新頑張ってくださいね。応援しています。 (3月18日 8時) (レス) @page23 id: e4a4033c2e (このIDを非表示/違反報告)
れん(プロフ) - とわさん» とわさま、コメントありがとうございます!沢山の蘭くんの小説の中からこちらを見つけてくださって嬉しい限りです!貴重なお時間を使って読んでいただいている分、面白かったと思ってもらえるようなお話に出来るよう頑張ります☺️ (3月16日 1時) (レス) @page21 id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)
とわ - 蘭くんの小説探してたらみつけたんで読ませていただいてます!めっちゃいいっすね…まじ好きな感じできてて… これからも読ませていただきます!応援してます!頑張ってください! (3月15日 3時) (レス) @page21 id: 8407209a34 (このIDを非表示/違反報告)
れん(プロフ) - kizunaさん» kizunaさま、コメントありがとうございます!こちらのお話にも遊びに来てくださって本当に嬉しいです☺️更新頑張りますので、またお暇な時に読んでいただけたら幸いです…! (2月23日 21時) (レス) id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:れん | 作成日時:2024年2月23日 0時

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