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任務は終わったと言うのに車に揺られて着いた場所は見慣れた梵天のアジトだった。
苛立ちを隠せない足音が静かな建物によく響く。それがまたイラついて、胸ポケットに仕舞っていた煙草に火を着けた。
昔は煙草には手を出さなかったのに、Aを失った寂しさを埋めるように吸い始めたこれにすっかり依存してしまった。
そう言えば家を出る前にバルコニーで煙草を吸っていたが、Aは何も言わなかったな。
興味がないのか、まだ俺への恐怖心が消えなくて言い出せないのか。
どちらにせよ、禁煙するか。自分の健康なんてどうでもいいが、Aが側にいる。
いずれは結婚もするのだから、Aのために辞めようと思う。
吸い掛けのタバコを落として靴で揉み消せば、後ろを歩いていた部下がそれを片付けた。ついでにこれも捨ててくれと、まだ数本入っている箱とジッポーを手渡した。
高いヤツですよと返そうとする部下に、欲しいならやるよと手をひらひらと振った。
「捨てる場所くらい考えろ。これだからヤニカスは馬鹿しかいねぇ。」
「まぁ…今のは蘭が悪いな。」
背後から聞こえた声に振り返れば、睨みつけるような視線を寄越しながら立っている九井がいた。呆れたような顔をしている鶴蝶もセットで。
部下は幹部二人を見て察したのか、頭を下げて席を外した。
呼んだのはお前かよと溜息を吐いて、用件は何だと訊ねる。
「Aって女、あれからどうした？」
「家にいるけど？何で？お前そういうの気にするタイプか？」
「そうじゃねえよ。」
本題を避けるような話し方に、何が言いたいのかと目を細めて問い掛ける。
欲しい答えは返ってくることなく、問答無用で九井の執務室へ連れて行かれた。
パソコンを弄る九井が画面から目を離さずに淡々と話を切り出す。
「あの女、昨日の事件の目撃者だって警察に行方追われてんぞ。」
「…は？」
「俺が監視カメラのハッキング出来んだから、警察だって監視カメラのチェックくらいすんだろ。」
「へぇー…。」
焦る気持ちを悟られないよう、気にしていないフリをする。
また一緒に過ごせる幸せで呆けていた。こんな簡単なことに気付かなかった自分の甘さを悔いた。
警察が怖いわけではない。もしもAが連れて行かれてまた引き離されたら、その方が何倍も怖いと思ってしまった。
やっとの思いでこの手に戻した幸せを失うわけにはいかない。他の何を失っても、Aだけは誰にも渡してやらない。
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れん(プロフ) - まゆさん» まゆさま、コメントありがとうございます！お褒めの言葉、とても嬉しく思います！「一生幸せ」も読んでくださってありがとうございます☺️全然系統が違うのに一気読みしていただけて嬉しいです！これからも楽しんでいただけるよう頑張ります✨ (3月18日 19時) (
レス) @page23 id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 初コメ失礼致します。お話が面白くメチャクチャ引き込まれてしまい、気づいたら一気に読んでしまいました！あと実は、れん様の他の蘭君のお話しも一気に読ませていただきました！どれも最高に良かったです！！更新頑張ってくださいね。応援しています。 (3月18日 8時) (レス) @page23 id: e4a4033c2e (このIDを非表示/違反報告)
れん(プロフ) - とわさん» とわさま、コメントありがとうございます！沢山の蘭くんの小説の中からこちらを見つけてくださって嬉しい限りです！貴重なお時間を使って読んでいただいている分、面白かったと思ってもらえるようなお話に出来るよう頑張ります☺️ (3月16日 1時) (レス) @page21 id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)
とわ - 蘭くんの小説探してたらみつけたんで読ませていただいてます！めっちゃいいっすね…まじ好きな感じできてて… これからも読ませていただきます！応援してます！頑張ってください！ (3月15日 3時) (レス) @page21 id: 8407209a34 (このIDを非表示/違反報告)
れん(プロフ) - ｋｉｚｕｎａさん» ｋｉｚｕｎａさま、コメントありがとうございます！こちらのお話にも遊びに来てくださって本当に嬉しいです☺️更新頑張りますので、またお暇な時に読んでいただけたら幸いです…！ (2月23日 21時) (レス) id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：れん | 作成日時：2024年2月23日 0時
