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夕食を終えて一息つく。
美味しかった、久しぶりに食べたと、あの頃の面影を宿した微笑みを浮かべるAに見惚れていた。
そんな時、伏せていたスマホが震える。時刻は19時を迎えようとしていた。
「悪い、ちょい電話。」
一瞬だけ寂しそうな顔を見せた気がして、頭をぽんと一撫でしてからバルコニーに出る。高層階を吹き抜ける夜の風は、地上で感じるそれの何倍も寒いと身を震わせた。
「任務だ。昼間は好き自由にさせたんだから夜くらい働けよ。」
「…行くわ。」
早朝に顔を合わせた九井からの電話に溜息を吐きながら了解の意を伝える。
「その前に一つ。」
「何だよ。」
胸ポケットに指を入れて箱を掴み、一本取り出して火を着ける。
「先に選ばせてやる。男と女、どっちの相手がいい？」
「男。」
「即答かよ。ま、一応確認しておこうと思ってな。」
鼻で笑い、早く来いと通話を切った九井に少し苛立ちを覚えた。だが世話になったのは確かだから邪険にも出来ない。
通話の切れたスマホを仕舞い室内へと戻れば、真新しいスマホを弄っていたAが顔を上げた。
「ごめんな、仕事行ってくるわ。」
椅子に掛けたままのジャケットを掴んで羽織り、その様子をじっと見つめたまま動かないAの横へ移動する。
「行ってらっしゃい。」
「寂しいって言って欲しいなー…なんて。」
「……。」
昔はよく、そう言ってくれたから。
俺が外せない用事で一人で外に行く時、決まって玄関まで着いてきて「寂しいよ」と言ってくれた。
それが堪らなく可愛くて、好きで好きで仕方がなかった。
あの頃のAはもういなくなってしまった。俺がそうさせてしまったのに悲しいなんて、自分勝手にも程がある。
「困らせてごめんな。行ってくる。」
「蘭くん、」
何も言わずにじっと俺を見るだけだったAが俺を呼び、玄関に向かって歩き出した俺のスーツの裾を掴んだ手に驚き足が止まる。
「帰ってくるよね…？」
慌てて振り返れば、Aが不安そうな表情を浮かべながら俯き加減で小さく呟いた。
「寂しい」なんて言葉以上に重くのし掛かり、全身に突き刺さる。
Aにそんな言葉を吐き出させたのは、紛れもなく俺のせいだ。
「絶対帰ってくる。約束する。」
悲しい顔を見たくなくて、椅子に座ったままのAを強く抱き締めて胸に閉じ込めた。
大丈夫。Aを一人置いてどこかへ行くなんて、もう二度としないと約束するから。
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れん(プロフ) - まゆさん» まゆさま、コメントありがとうございます！お褒めの言葉、とても嬉しく思います！「一生幸せ」も読んでくださってありがとうございます☺️全然系統が違うのに一気読みしていただけて嬉しいです！これからも楽しんでいただけるよう頑張ります✨ (3月18日 19時) (
レス) @page23 id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 初コメ失礼致します。お話が面白くメチャクチャ引き込まれてしまい、気づいたら一気に読んでしまいました！あと実は、れん様の他の蘭君のお話しも一気に読ませていただきました！どれも最高に良かったです！！更新頑張ってくださいね。応援しています。 (3月18日 8時) (レス) @page23 id: e4a4033c2e (このIDを非表示/違反報告)
れん(プロフ) - とわさん» とわさま、コメントありがとうございます！沢山の蘭くんの小説の中からこちらを見つけてくださって嬉しい限りです！貴重なお時間を使って読んでいただいている分、面白かったと思ってもらえるようなお話に出来るよう頑張ります☺️ (3月16日 1時) (レス) @page21 id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)
とわ - 蘭くんの小説探してたらみつけたんで読ませていただいてます！めっちゃいいっすね…まじ好きな感じできてて… これからも読ませていただきます！応援してます！頑張ってください！ (3月15日 3時) (レス) @page21 id: 8407209a34 (このIDを非表示/違反報告)
れん(プロフ) - ｋｉｚｕｎａさん» ｋｉｚｕｎａさま、コメントありがとうございます！こちらのお話にも遊びに来てくださって本当に嬉しいです☺️更新頑張りますので、またお暇な時に読んでいただけたら幸いです…！ (2月23日 21時) (レス) id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：れん | 作成日時：2024年2月23日 0時
