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高校一年生の時に友達と行った麻布祭りの帰り、六本木駅まで一人で向かう途中。
怖い人達に絡まれた。
暇なら遊びに行こう、家まで送る、と。
断って早々にその場を後にしようとするも、履き慣れていない下駄で逃げることは不可能だった。
掴まれた腕が痛みで悲鳴を上げ、アルコールの匂いと荒い語気に涙が滲んだ時だった。
「俺らのシマで何勝手な事してくれてンの?」
振り返れば独特なツートンカラーの男の子が2人。
私を取り囲む男達を睨み、気怠げに腕を組んで舌打ちをした。
声も出せず震え上がる私を見て、一瞬だけ微笑んだ気がした。
それも束の間、私の腕を掴む男に瞬時に距離を詰めたかと思いきや、言葉もなく突然殴り始めた。
隣にいた彼より少し背の低い男の子も、狂気さを孕んだような笑みで別の男の体勢を崩して嫌な音を響かせる。
「祭りの後はゴミが散乱するからさあ…片付けてやんねーとな。」
「俺らの六本木汚しといて、生きて帰れると思うなよ。」
蹲る私のすぐ近くで人を殴打する音と苦しそうな声が聞こえた。
時折飛んでくる鮮血にヒュッと息を呑む。
頭上の悍ましい光景を見れず、ただじっとこの恐怖が終わるのを待つことしか出来ずにいた。
「あーあ、手ェ汚れたんだけど。」
「帰ろうぜ兄ちゃん。」
「おー。帰んぞー、そこのお前も。」
差し出された手は赤く染まっていて、とてもじゃないけど握り返せなかった。
震える手で巾着からハンカチを取り出し、彼に差し出す。
「それ汚れんだろ。血は時間経つと落ちにくいの知らねーの?」
「い、いいです…どうぞ…。」
「…ま、こんな汚ェ手は触れねーよな。」
これ貰うわ、そう言った彼の手に真っ白なハンカチが渡った。
何度も拭って再び差し出された手に、困惑した私が彼の顔色を伺った。
早くしろよ。
気怠そうな声とは裏腹に、そっと取った手は優しく繋がれた。
六本木駅まで送ってもらい、お礼がしたいと申し出れば目を細めて笑った彼が携帯の画面を差し出す。
[ 090-XXXX-XXXX ]
帰ったらすぐ連絡しろと言い残して、改札前に私を置いて彼らは帰って行った。
これが、12年前に愛し合った元彼との出会い。
彼の名前は灰谷蘭。
六本木のカリスマと呼ばれ、お洒落で格好良く、喧嘩が強い人だった。
好きだった。蘭くんの全てが大好きだった。
それなのに、終わりにした。
連絡が取れなくなり、別れを察知した私は真実を聞くことも出来ず彼から逃げ出した。
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れん(プロフ) - まゆさん» まゆさま、コメントありがとうございます!お褒めの言葉、とても嬉しく思います!「一生幸せ」も読んでくださってありがとうございます☺️全然系統が違うのに一気読みしていただけて嬉しいです!これからも楽しんでいただけるよう頑張ります✨ (3月18日 19時) (レス) @page23 id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 初コメ失礼致します。お話が面白くメチャクチャ引き込まれてしまい、気づいたら一気に読んでしまいました!あと実は、れん様の他の蘭君のお話しも一気に読ませていただきました!どれも最高に良かったです!!更新頑張ってくださいね。応援しています。 (3月18日 8時) (レス) @page23 id: e4a4033c2e (このIDを非表示/違反報告)
れん(プロフ) - とわさん» とわさま、コメントありがとうございます!沢山の蘭くんの小説の中からこちらを見つけてくださって嬉しい限りです!貴重なお時間を使って読んでいただいている分、面白かったと思ってもらえるようなお話に出来るよう頑張ります☺️ (3月16日 1時) (レス) @page21 id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)
とわ - 蘭くんの小説探してたらみつけたんで読ませていただいてます!めっちゃいいっすね…まじ好きな感じできてて… これからも読ませていただきます!応援してます!頑張ってください! (3月15日 3時) (レス) @page21 id: 8407209a34 (このIDを非表示/違反報告)
れん(プロフ) - kizunaさん» kizunaさま、コメントありがとうございます!こちらのお話にも遊びに来てくださって本当に嬉しいです☺️更新頑張りますので、またお暇な時に読んでいただけたら幸いです…! (2月23日 21時) (レス) id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:れん | 作成日時:2024年2月23日 0時