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18 ◆ ページ18

肩から聞こえる小さな寝息に愛おしさが募る。

繋いだ手を離すのは惜しいが、先程からリビングで鳴り続けるスマホを取りに一旦寝室を後にした。


何事かと見れば、竜胆と引っ越し業者から鬼のように着信があって溜息が漏れる。



「何ー?」

「何じゃねえよ…どこにいんの?」

「家だけど。」



早く開けろと煩い弟にオートロックを解除してやれば、わざとらしく足音を立てて部屋へと入って来た。

Aが寝てるから静かにしろと怒れば、寝室を一瞥して「ごめん」と呟いた。



「俺ずっと下で待ってたんだけど。」

「Aと話してたんだから仕方ねえだろ。」



綺麗な部屋を汚したくなくて、バルコニーに出て煙草を一本取り出す。

吹き抜ける風に紫煙が混ざって飛ばされていった。



「頼まれてた物、ここ置いとくよ。」



俺と同じスマホの色違いを買ってくるよう、竜胆に頼んでおいた。こいつもこいつで仕事が早くて助かる。



「昨日の報告は?」

「もう終わってる。九井が気に掛けてたけど。」



一本ちょうだい、後を追うようにバルコニーに出て来た竜胆が俺の胸ポケットから煙草の箱を取り出した。


九井の奴、後始末は好きにしろと言ったくせに。

あれはあれで、自分が少しでも関わってしまったから気になっているのかもしれない。



「マイキー、何か言ってた?」

「別に。三途はさっさと死体(スクラップ)にしろって喚いてた。」

「ふーん…。」



首領から指示がないのなら、Aをどうしようが俺の勝手だ。

殺すつもりなんてさらさらないし、Aが心を許してくれた時は籍を入れて一生共に歩んで行くと決めている。


そのためならば、梵天という組織さえも敵に回すことだって躊躇わない。

誰にも、俺を止めることは出来ない。



「…ヨリ戻したの?」

「んー…どうだろうな。」



曖昧な返事に、竜胆が眉間に皺を寄せた。

今はまだその途中なのだと話せば、複雑そうな表情を浮かべた竜胆が煙を吐き出す。



「誤解、解けたんじゃねえの?」

「まだ話してない。」



関東事変のことも、鑑別所に入ったことも、まだ話せずにいる。

それは俺しか知らない真実であって、こんな状況で話したところで言い訳だと思われたら全てが無駄になってしまう。

今はまだその時じゃないのだと、逸る気持ちを抑えて竜胆に向き直る。



「何も言うなよ?」

「俺の女じゃねーんだから何もしねえよ。」



遠くに聳えるビルを眺めて、竜胆が呟いた。

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れん(プロフ) - まゆさん» まゆさま、コメントありがとうございます!お褒めの言葉、とても嬉しく思います!「一生幸せ」も読んでくださってありがとうございます☺️全然系統が違うのに一気読みしていただけて嬉しいです!これからも楽しんでいただけるよう頑張ります✨ (3月18日 19時) (レス) @page23 id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 初コメ失礼致します。お話が面白くメチャクチャ引き込まれてしまい、気づいたら一気に読んでしまいました!あと実は、れん様の他の蘭君のお話しも一気に読ませていただきました!どれも最高に良かったです!!更新頑張ってくださいね。応援しています。 (3月18日 8時) (レス) @page23 id: e4a4033c2e (このIDを非表示/違反報告)
れん(プロフ) - とわさん» とわさま、コメントありがとうございます!沢山の蘭くんの小説の中からこちらを見つけてくださって嬉しい限りです!貴重なお時間を使って読んでいただいている分、面白かったと思ってもらえるようなお話に出来るよう頑張ります☺️ (3月16日 1時) (レス) @page21 id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)
とわ - 蘭くんの小説探してたらみつけたんで読ませていただいてます!めっちゃいいっすね…まじ好きな感じできてて… これからも読ませていただきます!応援してます!頑張ってください! (3月15日 3時) (レス) @page21 id: 8407209a34 (このIDを非表示/違反報告)
れん(プロフ) - kizunaさん» kizunaさま、コメントありがとうございます!こちらのお話にも遊びに来てくださって本当に嬉しいです☺️更新頑張りますので、またお暇な時に読んでいただけたら幸いです…! (2月23日 21時) (レス) id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:れん | 作成日時:2024年2月23日 0時

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