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蘭くんの言っている言葉の意味を理解出来ないほど馬鹿ではない。

伝えられた内容があまりに世間とかけ離れすぎていて、飲み込むのに時間が掛かった。



「何で、そんなこと…!」



どうしてそんな勝手な事をしたのかと愕然とする。

勝手に部屋を解約され、荷物を運び出され、今日からここに住むように言われて首を縦に振る人なんていない。

それどころか、昨日まで一生懸命働いてきた会社も辞めさせるなんて。


眠っていたほんの数時間で、たった一人の人間の手によって私の生活が崩壊してしまった。

こんなにも、簡単に。

私の意思なんて関係なくて、蘭くんがやろうと思えば何だって出来るのだと言われているみたいだった。



「蘭くん、何で…?」



今も昔も変わらないと言った蘭くんが嘘みたいで、信じられなくなる。

あの頃の蘭くんはいつだって私の気持ちを優先してくれて、私が嫌がることは何一つしなかった。

甘やかしたいと言った彼に、私はずっと甘えていた。だから今も、私の意思を尊重してくれると思い込んでいた。


まるで別人のような蘭くんに、どうしてと問う。

同じ部屋に住まわせて、会社にも行かせないようにして。

外部との接触を断つようなことを強いるのは、どうしてなの。



「私が…昨夜の目撃者だから?」

「俺、別れたなんて一度も思ってねえよ。」

「え、…何の話…?」



少しだけ口角を上げた微笑みを変えず、私の欲しい答えとは違うものが返ってくる。

別れたなんて思っていない、その言葉にまた頭の中が混乱する。


この12年間、連絡を取らなければ会う事もなかった。

それなのに、別れていないなんて言えるような関係じゃないことくらい、お互い理解していると思っていたのに。



「別れようって言ってねえし、言われてねえよ。」

「そ、れは…、でも!」

「これ、覚えてるー?」



どこから取り出したのか、長細い指先に挟まれているのは折り畳まれた紙が一つ。

蘭くんがそれをゆっくりと開き、私に差し出した。震える手を伸ばして受け取り、中身を確認してはっとなる。



「ここに、別れの言葉は書かれてなかった。」



[今までありがとう]


それは、あの部屋を出て行く時に泣きながら書いた蘭くんへの最後のメッセージだった。


12年経った今でも捨てる事なくずっと持ち続けていたことが、蘭くんの答えなのだと知った。

蘭くんは、私をここに縛り付けたい訳ではない。

本当に、今も昔も変わらず、私のことを愛しているのだと。

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れん(プロフ) - まゆさん» まゆさま、コメントありがとうございます!お褒めの言葉、とても嬉しく思います!「一生幸せ」も読んでくださってありがとうございます☺️全然系統が違うのに一気読みしていただけて嬉しいです!これからも楽しんでいただけるよう頑張ります✨ (3月18日 19時) (レス) @page23 id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 初コメ失礼致します。お話が面白くメチャクチャ引き込まれてしまい、気づいたら一気に読んでしまいました!あと実は、れん様の他の蘭君のお話しも一気に読ませていただきました!どれも最高に良かったです!!更新頑張ってくださいね。応援しています。 (3月18日 8時) (レス) @page23 id: e4a4033c2e (このIDを非表示/違反報告)
れん(プロフ) - とわさん» とわさま、コメントありがとうございます!沢山の蘭くんの小説の中からこちらを見つけてくださって嬉しい限りです!貴重なお時間を使って読んでいただいている分、面白かったと思ってもらえるようなお話に出来るよう頑張ります☺️ (3月16日 1時) (レス) @page21 id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)
とわ - 蘭くんの小説探してたらみつけたんで読ませていただいてます!めっちゃいいっすね…まじ好きな感じできてて… これからも読ませていただきます!応援してます!頑張ってください! (3月15日 3時) (レス) @page21 id: 8407209a34 (このIDを非表示/違反報告)
れん(プロフ) - kizunaさん» kizunaさま、コメントありがとうございます!こちらのお話にも遊びに来てくださって本当に嬉しいです☺️更新頑張りますので、またお暇な時に読んでいただけたら幸いです…! (2月23日 21時) (レス) id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:れん | 作成日時:2024年2月23日 0時

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