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14 ◆ ページ14

Aにはあまり良くない所は見せないように隠してきたつもりだった。

Aの前で自ら喧嘩をするような真似はしなかったし、連絡を取り合うのは天竺の幹部のみに留めてきた。

だから関東事変の当日、大きな抗争がある事は黙って家を出てきた。

その結果が最悪の事態を招き、俺達は離れ離れになった。


あれから12年。

目の前からAがいなくなった俺は何も隠す事なく、やりたい放題に何でもやってきた。


そして昨日、事故が起きる。

あの場にAが来るとは思わなかったし、顔も姿も分からないからと好き放題してスマホを壊し、男も殺した。

一つ間違えていたら、Aを殺していたかもしれない。

怯えられて当然、自業自得としか言いようがない。


それを差し引いても、またこうして再会出来た喜びの方が大きかった。

ずっと会いたかった最愛のAにもう一度触れることが出来て、運命だとさえ思えた。


何度抱き締めても、どんなに愛していると伝えても、その言葉が返ってくることはない。


それでも良かった。

Aの唇が拒絶の言葉を紡ぐことはなく、手を振り払われることも体を突き飛ばされることもなかったのだから。



「…家に帰りたい。会社にも…行かないと。」



もう、手遅れかもしれないけれど。

窓の外を遠く見つめるAがぽつりと呟いた。



「Aの家はここだけど?」

「いや、朝来たよね。あの部屋、」

「もう解約した。荷物はもうすぐ届くんじゃね?」



スーツの内ポケットに入れたままの携帯を取り出し、メッセージを確認する。

荷物の運び出しは終わり、これから向かうと入っていたのが30分程前だった。

梵天御用達の業者は仕事が早くて助かる。


信じられないと言った顔で俺を見つめるAと視線がぶつかった。



「今日からここが新しい家な。」

「嘘、だよね…?」

「本当。ちなみに会社にも行く必要ねーから。」

「…まさか…!」



Aが眠っている間に九井から貰った個人情報のデータに記された会社を調べ、退職の連絡を入れた。

会社になんか行かなくていい。新しい仕事を見つける必要もない。

不自由な事は多いかもしれないけれど、何もしなくても死ぬまで生きていけるほどには甘やかしてやれる。


夢にまで見たAと漸く再会出来たのだから、もう二度と離してなどやらない。

どこにも行かずに、俺の元で一生一緒に過ごしてほしい。


最初で最後の俺の我儘を、どうか聞いて欲しい。

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れん(プロフ) - まゆさん» まゆさま、コメントありがとうございます!お褒めの言葉、とても嬉しく思います!「一生幸せ」も読んでくださってありがとうございます☺️全然系統が違うのに一気読みしていただけて嬉しいです!これからも楽しんでいただけるよう頑張ります✨ (3月18日 19時) (レス) @page23 id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 初コメ失礼致します。お話が面白くメチャクチャ引き込まれてしまい、気づいたら一気に読んでしまいました!あと実は、れん様の他の蘭君のお話しも一気に読ませていただきました!どれも最高に良かったです!!更新頑張ってくださいね。応援しています。 (3月18日 8時) (レス) @page23 id: e4a4033c2e (このIDを非表示/違反報告)
れん(プロフ) - とわさん» とわさま、コメントありがとうございます!沢山の蘭くんの小説の中からこちらを見つけてくださって嬉しい限りです!貴重なお時間を使って読んでいただいている分、面白かったと思ってもらえるようなお話に出来るよう頑張ります☺️ (3月16日 1時) (レス) @page21 id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)
とわ - 蘭くんの小説探してたらみつけたんで読ませていただいてます!めっちゃいいっすね…まじ好きな感じできてて… これからも読ませていただきます!応援してます!頑張ってください! (3月15日 3時) (レス) @page21 id: 8407209a34 (このIDを非表示/違反報告)
れん(プロフ) - kizunaさん» kizunaさま、コメントありがとうございます!こちらのお話にも遊びに来てくださって本当に嬉しいです☺️更新頑張りますので、またお暇な時に読んでいただけたら幸いです…! (2月23日 21時) (レス) id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:れん | 作成日時:2024年2月23日 0時

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